5 神のメッセージ(4)
神はつまり、どうあっても滅びかけた世界に送り込みたいのではないか。彼女は、そんな疑念を抱く。
「いえ、勇者が必要な世界というものは、そういう世界なのでして」
歴代の勇者はどうだったのか。皆、同じような詰んだ世界に送り込まれたのだろうか。そういう疑問も当然抱くだろう。
「皆、見事に役目を果たしましたよ」
のらりくらりとかわしてやろう。そんな意図のありそうな言い方だった。
これはつまり、生きて帰ったとも助かったとも言えない、ということだろう。
「まあその……。不幸にも命を落とした人はいます。それについて嘘はつきません。過酷な職業ですよね、勇者っていうものは」
しかし、わざわざ疑念を抱かせるようなことを言わずとも、嘘をつけばいいだけじゃないか。なぜ正直に、いや、正直ではないが嘘でもない言い回しを、あえてするのだろうか。
「ボクもそう思いますが、そういうことは禁止されているんです」
呪われているのか。
「呪いじゃなく……いや、呪いなのかも知れませんね。自分で自分にかけた、呪いのようなものなのでしょう」
大体、どうしてこんな、滅びかけた世界に勇者を遣して助ける、なんて慈善事業をやっているのだろうか、と彼女は不思議に思うだろう。
「正義感なのでしょうかね、たぶん。ボクにもよくわかりません」
意外だった。もっとこう、彼が世界を救うのは当たり前じゃないですか、なんて偉そうに胸を張って言うものかと思っていたのだ。
「もちろん、胸を張って言いますよ。神ですから」
やはり君はそういうやつだよな。
「さて、いつまで話していても仕方ありません。次の世界に行っていただきましょう」
類似するような詰んだ世界はやめて、もう少し、いや、かなりマシな世界にしてもらう必要がある。
「極端なのは別にして、勇者が必要な世界ですから、そこはご理解ください」
まあ、理解はしているのだけれど、もうちょっと手心というか。
「次は、前ほどひどい世界ではないと思いますよ。世界は、比較的平和なんじゃないかと」
わかってくれて嬉しいよ。
「では、すぐに飛ばしますね!」
すぐにすぐにって、何でいつもそんなに急なの!
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