第29話 ダンジョンブレイク②

ダンジョンという機構の一員であるモンスターが、外へ湧き出ることは通常ではあり得ない。

何らかの原因でダンジョンに満ちた魔素が溢れる事は稀にあれど、それは小規模なダンジョンの話。

深淵を保有する大規模なダンジョンが崩壊するなんて、この国では一度も起こっていない。



だけど一度だけ。

20年ほど前にアメリゴ国という国で、深淵保有のダンジョンが崩壊していた。

学校の授業で見せられた空撮映像は、探索者にしてみれば地獄にも等しい光景だった。

無人の荒野をモンスターが埋め尽くし、大都市へ向けて進撃している映像。

ヘリに乗ったアナウンサーが幾度も“abyss深淵”と怒鳴り散らしているのが印象的だった。

辛うじて大都市に魔物の群れが到達する前に鎮圧出来たが、犠牲となった探索者も多かったと聞く。

それと同じ事が人口密集地で···よりにもよって首都で起きた?

何の冗談かと言いたい。



必死に走り続けて現場に到着すると、そこでは想像通りの──いや、想像以上の惨劇が繰り広げられていた。

道路は大きくひび割れ、奥の方には直径50mはあるだろう大穴がぽっかりと開き、そこからモンスターがうじゃうじゃと湧き出していた。

そしてそれらの中には、なぜか幼い頃にマソリアで見たキメラも複数混じっている。



「(···でも戸惑っている場合じゃない)」



先に来ていた探索者たちが避難誘導しながら戦っているけど、群衆の混乱は加速するばかり。

とにかく俺も参戦して、少しでもモンスターの数を減らさないと───



「お嬢さんたち、下がっていなさい。後は私が片づける」



少しくたびれたビジネススーツを着た、長身のお姉さんが後ろに立っていた。

···ダンジョンに何度も潜ってきて、モンスターなどの生物の気配には敏感になっていたはずなのに、全く気付けなかった。



「片づけるって──えっもう居ない!?」



言うが早いか、ミオちゃんが動きを追えないほどの速度で、早くもキメラカマキリと接敵。

腰の日本刀を抜いた──と俺が認識した瞬間にはキメラが両断されていた。

飛び散った毒液もきっちり避けている。



その後も人間離れした動きで駆け回り、剣光が見える度にモンスターがバタバタと斃れていく。

その中には下層のボス級と思しきモンスターも混じっていて、使命感に駆られていたのがアホらしくなるほどの蹂躙劇だった。



「えぇ···」



もう全部あのスーツのお姉さんだけでいいんじゃないかな、このペースなら湧き出たモンスターの掃滅は近いはずだし。

···だけどなぜか、俺にはあの女の人がように見えてしまって。

なんとなくこれでは終わらないような···イヤ~な予感がしていた。






──────────────────────


アカリがシリアスしてる間、ミオちゃんはずっとお姫様抱っこされていたという事実。


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