第26話 BAN

アルマジロは体の隙間に槍を突き刺して、軟く脆い内側を攻撃すると倒しやすい。

それでも悲しいことに、俺の素のパワーだけでは威力が少し足りない。

だからとりあえず、利き腕じゃない左腕を腰のナイフで切り裂いた。



ブチブチと血管や神経が千切れ、体の奥底から“力”が湧き出る感覚。

やっぱ一撃で倒したほうが配信的にも映えるよな、と考えての行動だったけど、ミオちゃんには心配をかけてしまったかな?



「·········」



沈黙が怖いけど、何も言ってこないという事はセーフだろう。セーフだな、ヨシ。

···俺がそんな事を考えている間に、最後のアルマジロをミオちゃんが“ごしゃっ”と潰して、中層第3層は無事にクリア。

虚無の表情( スンッ( ˙-˙ ) )でメイスを振り上げるミオちゃんの強者感といったらない。



階層ごとにある石組みの階段を下って再び雑魚敵を蹴散らし、またボス部屋へ。

ボス前の無双は第3層で十分やったし、この辺はサクサク進んでいかないと飽きられてしまう。



コメント:なんで進行ペースが上がってんの!?

コメント:まだ本気じゃなかったとかマジ?



モンスターのラインナップは大して変わり映えしないけど、コメ欄をチラ見する限りだと反応は悪くないっぽい。

そこは一安心だな。良かった。

···まあ自分でも、中々に凄惨な事をしてるという自覚はある。

俺は自傷だし、ミオちゃんはゴリラで蛮族。

グロ耐性無いと見れないかもしれん。



映像映えを気にしつつ、いざボス部屋。

さて今回はどんなモンスターなのかね。








コメント:なにこれ

コメント:は?

コメント:仲間割れ?

コメント:オークキングを丸呑みってヤバくね

コメント:まずい 逃げて二人とも



扉を開けると、満身創痍の──オークキングが大蛇に酷似したモンスターに捕食されていた。

そしてろくに咀嚼することなく、まだ動いているオークを無理矢理腹に閉じ込めた、その瞬間。

“ジュッ”というナニカが溶けるような音とオークの断末魔がほんの一瞬響き、膨れていた大蛇の腹が少しずつ元通りになっていく。



コメント:あの蛇って下層ボスじゃね?

コメント:嘘だろ

コメント:空間が魔力でうっすら歪んでる···?

コメント:なんでここに居るんだよ!?

コメント:イレギュラーか

コメント:逃げて超逃げて



教本で見たことがある。

蛇に似た体と竜の頭、蝙蝠の翼を持った亜竜種。

体長は50mを優に越え、頑強な鱗が皮膚を覆い隠している。

──始祖竜ワイアーム

確か本来であれば下層に出現する、そこそこレアなモンスターだったはずだ。



一般的にダンジョン内のモンスターはポップした階層からは出てこないとされる。

だけどここは魔窟ダンジョン···ファンタジーの産物。

ダンジョンが湧き出たメカニズムは未だに解明されていないし、絶対的な法則も存在しない。

だから“こういう事イレギュラー”は稀に起こる──マソリアで学んだことだ。



「アカリちゃん、早く逃げ──」

「大丈夫」



1,敵は獲物を消化している最中で隙だらけ

2,もし何か予想外の攻撃をしてきても、俺には[自動回復]がある

3,下層ボス、しかもイレギュラー湧きとかいう強烈なバズり要素を逃してたまるか



コメント:おいいいいい!?

コメント:ミオちゃん止めて!

コメント:ちょ、足速すぎ



「アカリちゃんっ、ダメぇえ!!」



コメ欄とミオちゃんの静止を無視して、一目散に向かった先は、未だに膨れ上がったままの胴体。

[復讐者の怨念]によって増幅した魔力を凝縮、槍先に纏わせる。

そして同じく増幅した膂力でもって、大蛇の土手っ腹にある核を──ブチ抜くッ!!




ドッッッッ───!!!!


「ギィィァァアア゙ア゙ア゙ア゙!!!!」




巨体が蠢きダンジョンを揺らす。

再生核を潰された始祖竜は耳をつんざく様な断末魔をあげ、最期の悪あがきと言わんばかりに、全身に張り巡らせていた毒腺をさせた。

オークキングを短時間で溶かすほどの強力な胃液と合わさった毒液が俺の頭上に降り注





















◆◆



えー、おはようございます。

どうやら俺は丸一日寝ていたらしい。

とっさに毒液を避けようとしたんだけど間に合わなくて、左半身が完全に溶けてたんだと。

脳味噌もガッツリ逝ってたらしいけど、俺はこうして生きている。

[自動回復]って凄いんやね。



···あの、ミオちゃん。

悪かったとは思ってるからさ、病院のベッドで添い寝するのは良くないと思うの。

俺って一応元は男だし、肉体の性別に引っ張られることも多いけど、そういった欲望もきちんとあるんだぞ?



···配信活動禁止? なんでさ。

ワイアームに突撃する直前の同接、5000超えてたのに勿体ないじゃん。

ほら、チャンネル登録者数もかなり伸びて──



『──この動画は再生できません』



···配信がBANされていた。

はあああああああああああ!?

しかもR18G以外の配信機能も封じられてるし。

これじゃあ配信活動出来ないじゃーんッ!








──────────────────────



というわけで配信パート終了···なのですが、謝らなくてはならないことが3つあります。


1つ目

今作の更新をサボって別作品を書いてました。


2つ目

1話目の後書きで『アカリに重い過去など無い』と書きましたが、あれは嘘になりました。

ノリでプロットを組んだせいです。


3つ目

アカリとミオがBANを回避するにはR18G配信しか無いのですが、2人はまだ高校生···18歳未満なので、R18G配信が出来ません。

そして今作は高校編で完結するので、これが最初で最後の配信になってしまいました。

配信はタイトル回収のための犠牲となったのだ。

···配信編を期待していた方へ一言。

すいませんでした!!!



動画サイト運営

「魔法どーんとか、刀ズバババ!ってのはまだ許容範囲内だけどさ、高校生がモンスターをミンチにしたり、自傷しながら戦ったりするのはさすがにダメ!最後もグロすぎ!」


「自傷スキル持ちは(グロいし教育上良くなさそうだし、見てるこっちもSAN値チェックさせられるから)配信するな!」



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