第7話 「斬ラレズ、模写サレル者」

【廃墟の十字路・人影の前】


紫音が前へ半歩出る。


紫音「……空斗、あれ、“敵”か?」


空斗「まだ断定できない。けど霊圧構造は異常。

魂の反応が不自然に均一すぎる」


春陽が小声で囁く。


春陽「形は人間やのに、気配が“透明”すぎる……

まるで、“魂の皮”だけ着せられたもんや」



【異変、起こる】


その“人影”が――首だけ、

カク、と横に傾けた。


“ギギィ”


骨が軋むような異音と共に、影の形が“波打つ”。


紫音「うわっ……!」


次の瞬間、

影が地面から抜け落ちるように“滑り出し”、

三人へ向かって疾走してくる!



【空斗・瞬時に指示】


「散開、右へ分岐!構造に触るな!

春陽、結界展開!紫音、左から回り込み!」


紫音、咄嗟に鞘から刀を抜く、戦闘体制。


「任しとき!」


解号が響く。


【「舞い散れ、“胡蝶繚斬”」】


双小太刀が舞い、紫の蝶が空間に散る。


模倣体は直線的な動きだが、

まるで“誰か”の構えをなぞるような奇妙な剣筋を繰り出してくる。


紫音「な、なにこれ……“型”が、俺の知っとる誰かに似とる……」


斬り結びながら、

蝶の毒が模倣体の表面に刻まれていく――が。



【異常な再構築】


刻まれた“蝶の痕”が、

じわじわと“反転”していく。


蝶の模様が、逆方向に動き、

まるで“毒そのものを模倣”して、無効化していくかのように――


空斗「毒が……逆流してる!?紫音の霊圧が模倣されてる!」


紫音「なんやこいつ、厄介やな…どないなってんねん!」



【春陽・結界展開】


「“陽結界・薄陽(うすび)”! お前ら、下がれ!」


地面に幾何学的な光紋が走り、

模倣体を囲うように結界が展開。


模倣体はその中でしばらく硬直し――

だが、“春陽の霊圧”にも、微かに反応を示す。


春陽「……あかん、これ、霊圧の“癖”すら真似ようとしてる……」



【空斗・冷静な観察】


空斗「――これは、個の戦闘じゃない」


「“魂の名を奪う”戦いだ。

自分自身を“定義”できないまま戦えば、

向こうに“自分の色”を染められる」


紫音「……つまり、“自分が自分である”こと、貫き通せへんかったら……」


春陽「魂、持ってかれる……ってことやな……」



紫音、刀を構え直して前へ出る。


紫音「ほな、こっちが“誰かのマネ”やないと、ちゃんと証明したるわ!」


「――俺の霊圧は、“誰かに守られた命”でできてる。

真似しよう思ても、命の重さまでコピーできるわけないやろ!!」


斬撃、蝶の軌跡、そしてその中にある“感情”――

紫音の“魂”を込めた一撃が、模倣体に突き刺さる!



斬ったはずなのに、模写された毒が“反転”する。


語った言葉すら、反響のように“返してくる”。


けれど――紫音の叫び、春陽の支援、空斗の知恵。


三人が“己の魂”を出し切った時、

“模倣では届かないもの”が確かに存在すると、

初めて気づくのだった。

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