第20話 お人形

 撮影がひと段落して昼休憩に入った俺たちは近くの湖でコンビニで買った飯を食らう。

「ねじこ、飯食えるんだな。それどう言う仕組み?」

「知りません、トイレだってするからほぼ人間と一緒です。」

 ねじこを作った博士はどんな人なんだろう。どうしてねじ子を作ったのだろう。もしかしたら知らないだけでこの世界中の人たちにねじこのようなロボットが紛れ込んでいる。そう思うと少し怖くなってしまう。


「ねじこのお父さんってなんでねじこを作ったの?」

「……言いたくない。」

 何か気分を害してしまった。理由はさっぱりわからない。ネジが緩んでいたので閉めようと頭に手をかざすと俺は相当ダメなことをしたみたいだった。

「やめて!触らないで!」

 かざした手を振り払われて予想もできなかった俺は固まった。比較的俺は子供の世話は慣れていると思っていたのでここまで怒るとは思わなかった。

「……なんで?どうしたの?」

 ねじこはこちらを見ていない。下を向いて、振り上げ終わった手を下ろしていた。


「私……私は!ロボットじゃ……」


 最後の声は聞こえない。だけど俺の言動、ねじこの反応からすぐに分かった。


 ロボットじゃない。


 これはそのまんまの意味ではない。ある意味ロボットコンプレックスを抱えていると分かった。

 ねじこは地面にぺたりと座り俺に苦しく話し始めた。

「私はお父さん……いや博士の死んだ子供をもとにして作られたロボット。だから私は代わり、思い出として残っているだけのお人形なの。」

 俺には分かった、失ってこの世に残された者の気持ちが。

「俺にとってねじこはねじこだ。大丈夫だ安心しろ。」

 俺は嘘をついた。嘘を軽率に使うことは後に最も相手をまた苦しむということを知っていながら使ってしまった。

 ねじこは言葉こそ発しなかったものの、落ち着いたらしく俺の胸に飛び込んできた。


 ほら、苦しんだ。

 

 傷んだ心を見て見ぬフリして、ねじこを抱きしめる。


 俺はまだねじこに夏来を重ねている。ねじこの気持ちをわかっていながら。

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