悪食のアリア〜偏食サイコ令嬢の飽くなき異食への探究〜
素直 氷華
1.「美味え!美味えですわ!!」「お嬢様ァアアア!!ゴブリンは食べ物じゃありませんッ!!!
第1話 ゴブリン
ここは君達が住む世界とは別の世界線、つまり異世界だ。
この世界では多種多様な種族が住んでいる。
一方で、彼らを脅かす【魔物】達も多種多様だ。
そして、そのような諸問題を解決するために、あるいは未知なる何かを求めんがため、『冒険者』という職業が存在する。
***
さて、ここは広大な異世界の大陸の1つ『ゴルゴンゾーラ』。
西部地方にある打ち捨てられた
青色の肌、黄色く澱んだ眼球と乱杭歯。額の2つの突起物。
粗末な腰蓑とは不釣合いな錆びた剣を引き摺るのは、縄張りを巡回する
「!!」
小鬼は人の気配を感じた。気配は『2人分』。
程なくして、2人の男女が小鬼の方に向かって歩いてきた。
女は美しかった。目筋がすっきり通った顔に太陽の光を具現化した様な
一目見て分かる上質な金属と皮をあつらえた服は冒険者の風体だが、貴族の気品を漂わせている。
男の方も特徴的だ。真っ黒な髪と瞳、雪の様な白い肌には濃い灰色の装束を纏っている。
「アリアお嬢様。後生でございます!このパンとチーズを一口ッ!一口お召し上がりください!もう3日!何も召し上がられていないではないですか!」
「くどいわアーノルド。私は最高の食事をするために欲求を高めているのよ。謂わば空腹は最高のスパイスですわ!」
「スパイス以前に倒れては元も子もないではありませんか!!」
(……容易イ……)
小鬼は徐々に近づいてくる2人を見てほくそ笑んだ。そして、この後のことを想像する。
まずは男を殺す。そして、女をほどほどに痛めつけて巣穴に持帰る。
何度も孕ませた肉袋がとうとう壊れたため、ちょうど良い。仲間達が本格的に輪姦するまで、味見をしよう。
妄想を極限まで膨らませた時、女が先に小鬼の間合いに入った。小鬼は剣を振り翳し、襲いかかる。
「あ、
女はゆっくりと小鬼に手を伸ばした。
避けるまでも無い。小鬼は破顔する。
そうだ!女の両腕と両脚を斬り落とそう!
きっと面白いぞ!
女の手が小鬼の顔に触れた。
ベキベキベキベキィイイイッツツ!!
小鬼は今まで聞いたことの無い音とともに熱と痛みが襲うのを感じた。何が起こったのか全く分からない。
それもそうだろう。
顔の左半分が潰されるのは未知の経験のはずだ。
女は小鬼の肩を持ち、首筋がよく見えるようにした。そして、にこにこと微笑んみながら、呟いた。
「頂きます」
その瞬間、女は小鬼の頸動脈に噛みついた。溢れ出る小鬼の血液も啜り、肉を咀嚼する。
小鬼は恐怖で叫ぼうとしたが、女が小鬼の口を塞ぐ。彼女は小鬼の舌に吸い付き、そのまま小鬼の舌を引き千切った。
コリコリとした食感を十分に堪能し、彼女は歓喜の涙を流した。
「美味え!!美味えですわーーー!!!」
「お嬢様ァアアアァアアア!!小鬼は食べ物じゃありませえええええええん!!!!」
奥から十数体の小鬼達が騒ぎを聞きつけ、駆けつけてきた。
「ふーふほふほ!ふふぉふへふほほ!!」
「ああっお嬢様!肉を頬張りながら話してはいけません!はしたない!!……そもそも小鬼を食べないでください!!」
小鬼達に男の言葉は分からない。
だが、女が仲間の体を食っているのを見て、全員怒り狂った。
「……はぁ、まったく。まずは魔物退治をしなければお話もできませんね……【
男は闇の
【
男が腕を振るうと、軌跡に合わせて、巨大な黒き犬が顕現し、小鬼達に牙を剥く。
あっという間に十数体の小鬼体はバラバラに食い千切られ全滅した。
「アーノルドのアホ!!」
「は?」
「クロちゃんが小鬼を食べてしまったら、私の分が無くなってしまいますわッ!!」
女ーアリア・メシアゲルは堅物の従者へぷりぷりと小言を言いながら、小鬼の骨をしゃぶっていた。
男ー従者アーノルドはため息をついた。
自身が仕える御令嬢は、自身が満足するまで、この罰当たりな冒険を終える気は無いのだろう。
かくして、自由かつ苛烈に生き、後に【悪食のアリア】と名を残す令嬢の飽くなき異食への探究が今、幕を開けたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます