王都決戦、俺の倉庫に何でもある

 王都・中央広場。

 逃げ惑う市民。炎に包まれた塔。破壊され尽くした城壁。

 その中心に、黒く蠢く巨体――復活した魔王の眷属「災厄竜ラグナ・ゼル」。


「たった一体に……この有様かよ」


 俺、ユウトは王都の城門前に立っていた。


 勇者パーティはすでに敗北。

 レオンたちは負傷して城内に立てこもっているらしい。


「そこの者ッ! 危ない、逃げなさ──」


 兵士の制止の声を遮るように、俺は小さくつぶやいた。


「開け」


 ──ガチャリ。


 空中に“扉”が出現した。


 倉庫スキルの内部領域。

 だが、もはやただの物置ではない。


 この中で、俺は魔導兵器を解析・融合し、精霊を育て、封印された神具を復活させてきた。


 まずは──


「《No.037:魔導列砲・エクス=ケラノス》、展開」


 巨大な砲塔が“空間から”展開される。

 兵士たちがその威容に目を見張る中、俺は静かに言った。


「照準、完了。撃て」


 ──ドォン!!!


 蒼白い光が災厄竜を貫く。

 その巨体が、瓦礫の山に突っ伏し、二度と動くことはなかった。


「な……な、な……なんだ、今のは!?」


「誰だ……あいつ……!? 王都を……救ったのか……?」


 俺は扉を閉じ、倉庫を収める。


 騒ぎを受けて、レオンたちがボロボロの姿で駆け寄ってきた。


「お、お前……ユウトか!?」


「え、えっと……助けてくれて……ありがとう……」


 レオンは歯を食いしばり、震える声で言った。


「……すまなかった。お前を追放なんてして……本当に、悪かった……」


 俺はレオンの顔を見下ろして、こう言った。


「……戦えないんだろ? “倉庫”じゃ」


 彼の顔がひきつる。


「でも、俺は……それだけで十分だったよ」


 ざまぁは、静かに。だが、確実に。


(──さて。あとは、魔王本体の方だな)


 俺はもう一度、倉庫の扉に手をかける。


 中にはまだ出していない“モノ”が、山ほどある。

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