スキル《記録》、1度見たものを再現可能→時間停止・死者蘇生・空間移動なんでもアリ

katura

無能なスキル

スキル授与の光が、天から降り注いだ。

神殿の床が淡く光り、少年少女たちが目を閉じる。


ここは――王立冒険者育成学院、スキル授与の儀式。

15歳となった生徒たちは、一人一人、神から己に与えられた才能を授かる。


「スキル《雷槍》! すげぇ!上級攻撃魔法だぞ!」「私、回復の《癒しの手》!ヒーラー確定ね!」


祝福の声が響く中、少年・ユウは静かに目を開けた。


──《記録》


「……は?」


思わず声が漏れた。

周囲の歓声が止む。生徒たちの視線が、冷たいものへと変わる。


「記録?なにそれ、ノートでも取るのかよw」

「ハズレスキル確定じゃん。てかそれ、戦えるの?」

「お前、授業で見てるだけのモブじゃん、マジでw」


冷笑の嵐。

ユウは言い返せなかった。

スキル《記録》。

スキル説明欄には、こう書かれていた。


《記録》:対象を観察・記録する。再現は不可。


(……それだけ? 本当にそれだけなのか?)


落胆と共に始まった学園生活。

ユウはすぐに実技試験で足手まとい扱いされ、パーティーから外され――そして、“戦力外通告”を受けた。


学院の門を背に、ユウは呟いた。


「……バカにしやがって」


その瞬間、頭の奥に響く、異音。


——《記録スキル、解除条件達成。進化を開始します》


「……え?」


目の前の視界に、何かが流れ込んできた。

授業で見た魔法陣。仲間が放った剣技。講師が一度だけ見せた高位魔法。


それらすべてが、今、彼の脳内に**“起動可能”**として表示されていく。


「これ……全部……?」


《スキル記録機能:起動完了》

《すべての記録対象:再現可能》


その時、ユウは理解する。


——自分が見てきたものは、すべて“使える”。

——このスキルは、“模倣”ではない。完全な“再演”だ。


ユウは笑った。


「……ああ。やってやるよ。全部、お前らに返してやる」


世界のルールが、彼の“観察眼”の下に、崩れ始めていた。

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