第5話 昔ながらのホットケーキ
お正月
一族の集まりは本家で行われた。
パパとママはその家の当主である人とお話をしていた。
広い和室に畳は敷かれているが、テーブルに椅子があって僕はそこに座っていた。
周りの大人たちは何やらお話をしている。
ポツンとしてる僕に話しかけてくる女の人がいた。
「元喜だよね?」
「そうですけど...」
そう言うと彼女は嬉しそうに笑った。
「昔、君のおしめも変えたことがあるのよ。子どもの成長って早いわ」
優しく僕の頭をなでた。
突如、僕のお腹がぐ~となる。
顔が真っ赤になった。
「お腹空いてるの?」
コクンと頷く。
「よし、緑さんが何か作ってあげよう。おいで」
勝手に抜け出したら、パパとママに怒られるかも。だけど彼女のあとを僕はついて行った。
◇◇◇
本家の屋敷は広い。
長い廊下を歩くと一つの部屋にたどり着く。
その場所には小さなキッチンと冷蔵庫。
小さな椅子とテーブルがあった。
「お正月に新作メニューを考えようと思ったけど、基本に戻ろうかなと思ったんだ。」
緑はホットケーキミックスを取り出した。
黄色の三角巾。ベージュのエプロンをして、彼女は小麦粉に卵。ぺーキングパウダー。砂糖。水。牛乳などを混ぜて、フライパンで焼いていく。
その顔はとても楽しそうだ。
彼女は二人分のホットケーキを焼き上げて、上にバターをのせる。
はちみつを用意して、ホットココアを僕の前に置いた。
「食べていいの?」
「もちろん、元喜の為に作ったんだよ。」
ニコッと微笑まれた。
ナイフとフォークを使って切り分ける。
切り分けて口に入れると。生地はふわふわでバターとはちみつが絡み合って、とても美味しかった。
「おいしい」
「ありがとう」
その言葉に緑さんは嬉しそうに笑って、自分もホットケーキを食べた。
あの後、勝手に部屋を抜け出したことを怒られたけど、僕はこの日のことを忘れられなかった。
◇◇◇
「出来たよ。あの日と同じホットケーキ」
緑さんは3人分用意した。
元と元喜の分のホットケーキを置いた。
昔の喫茶店に出されるホットケーキのようだ。
そこに元はホッとする。
3人そろって手を合わせる。
「いただきます。」
ナイフとフォークで切り分けて食べる。
元輝はニコニコ笑顔だ。
元も一口食べると、幸せな笑みを浮かべた。
そう、彼女の料理は日常を感じさせてくれるのだ。
緑は元と元輝が美味しそうに食べているのを幸せそうに眺めていた。
「緑さん、元さん。また食べに来ていい?」
「いいけど、今度はパパとママに言ってからいらっしゃい。きちんと話せば分かってくれるわ。」
緑さんの言葉に同意する元。
「そうだよ。元喜」
二人の問いに「分かった!」と口角をあげる。
◇◇◇
「お疲れ様でした。」
「お疲れ様。元君」
緑は元を家に送り届ける為、店の奥にある自室へと向かった。
元が戸を開けようとした時、元喜が声をかけた。
「元さん、緑さんのことどう思ってる?」
「え?」
どうも、この子は俺と緑さんの仲を誤解してるみたいだ。
「だから、言っただろう?緑さんに救われた縁があるって」
「それは恋じゃないの?」
元喜の言葉は止まった。
(恋?俺が緑さんに...)
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