第6話
「チケット拝見しました、楽しんで」
そう言われるや否や彼女は目をキラキラさせながら館内に入っていく。
少しあとを歩くがもうすでに楽しそうな彼女を見て俺も少し楽しい気分になってきた。
「まずはどこに行こうか」
「まずは大水槽に行かない?あそこは後々だと混むから先に見ておこう」
「わかった」
大水槽という名前に偽りはない位大きな水槽、そこには種類様々な魚や甲殻類、エイやサメなども泳いでいた。
「ここもいいもんでしょ」
「あぁ」
「見て見て、綺麗な魚」
「ですね」
その後も浮かれた様子の彼女を俺が後ろから見守るような形で色々な水槽を見て回った。
「そろそろシャチのショーの時間ですね」
「じゃあ行こっか、真ん前はびしょ濡れになっちゃうから程々に真ん中あたりに座ろ」
シャチショーまであと20分はあるというのにもうすでに結構な人数が待機している。土曜日の目玉ショーの人気は凄まじい。
「飲み物買いに行くけど、何か欲しい?」
「緑茶でいーよ」
「はーい」
彼の背中を少し見送り前を向き直す。
今日彼をこのデートに誘ったのは彼が私に対してどれくらい好意を持っているかを知りたかったからだ。
この様子だとガチ恋とかではなさそうだ。比較的民度が良くガチ恋も滅多に湧かない私のリスナー層だが一応知っておきたかった。
「でも…楽しいなぁ」
「楽しんでもらえているな何よりだよ」
「あっおかえり。これお茶代」
「いいですって、誘ってもらった立場ですしこれくらいしないと」
「敬語漏れてるよ」
「あ…はは…ごめん。結構癖になっちゃってて…あっ、始まるみたい」
「そーだね」
いつの間にか人が増え、彼との物理的な距離感が近くなる。
彼の男の子の匂いが私の鼻腔をくすぐる。
周りの男の子とは少し雰囲気が違う彼だが、案外年相応なところもあるのだな。
「俺の顔に何か?」
「うぅん、なんでもない」
そうしてシャチショーが終わり、一旦お昼ご飯を食べることにした。
「美味しい」
私はシャチイメージのカレーライス、晶くんはサメ肉のハンバーガーだ。
「はい、一口お裾分け」
「!?!?!?」
「あははっ、朝の時より顔真っ赤w」
「最推しにあーんとか全オルリスナーの夢なんですよ…」
「だったら」その特権を甘受しなさい」
「いただきます」
パクリとカレーを食べる晶くん。やっぱり可愛いな彼。
「じゃあ僕のも一口お裾分けです、ここなら間接キs…」
自分で言いかけて今更気が付いたのか…成績は学年トップなのに…
「かっかかか、間接キスしてしま…た…」
「はいじゃー一口貰うね〜」
ん、案外美味しい。臭みとかもないし。言われなかったら気がつかないや。
「ほら、早く食べなよ」
「そっそそうだね…」
そうしてご飯を食べ終え、会計は「ここは俺が」の一点張りでテコでも動かなかったので甘えることにした。
「次は深海コーナにしない?」
「いいですね」
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