パート35: 師匠の告白と最終目的
宗教組織『光の神』教団との衝突を終え、俺たちは安全な場所まで撤退した。
戦闘自体は俺が一方的に片付けたが、精神的に疲労は大きい。
特にリリアーナは、自身が信じていた教会が俺を「異端」と見なし攻撃してきたことに、大きなショックを受けているようだった。
「アルト様…わたくしは…わたくしは、アルト様が正しいと…神が…教会が間違っていると…」
彼女は涙を流しながら、俺の服に顔を埋める。
(まあ、辛いよな。信じてたものに裏切られたんだから)
俺はリリアーナの頭を撫でてやった。
そんな俺たちの元に、王都のエリック老人から、至急の呼び出しが入った。
「『天空の鏡』を持って、すぐに戻ってきてほしい。伝えねばならぬ真実がある」とのこと。
その文面からは、ただならぬ緊張感が伝わってきた。
俺たちは王都へ戻り、公爵邸でエリック老人と対面した。
エリック老人は、俺たちが無事に戻ってきたこと、そして遺物『天空の鏡』を確認すると、安堵したような、しかし厳粛な顔つきになった。
「アルト公爵…貴方様は、二つの遺物を手に入れられた。そして、自身の力…古代魔法を覚醒させ、さらに高められた。今こそ、ワシが長年隠してきた真実を、お伝えする時が来た」
エリック老人は、静かに語り始めた。
彼の言葉は、俺の予想を遥かに超えるものだった。
「ワシは…滅亡した古代文明の…最後の生き残りじゃ」
(…は?)
俺は呆然とした。
師匠が、古代文明の生き残り?
「我が名はエリック。かつては、古代文明において、『叡智の探求者』と呼ばれておった。あの文明は、遥か昔…神代の時代に、この世界に存在しておった」
エリック老人は、古代文明の繁栄、彼らが世界の法則を自在に操っていたこと、そして…その滅亡について語った。
「あの文明は、ある日、突然、滅びた。全てが一瞬で塵と化した…まるで、世界そのものが、彼らを拒絶したかのように」
滅亡の原因については、エリック老人も確信を持てていないようだった。大災害、異世界からの干渉…あるいは、彼ら自身の力が、制御不能になったのかもしれない、と。
「ワシは、その滅亡の瞬間…古代魔法の力により、時間を停止させ、辛うじて生き延びた。そして、長い長い時間を経て、現代によみがえったのじゃ。ワシの目的はただ一つ…あの文明がなぜ滅んだのか、その真実を究明すること」
エリック老人は、自身の悲願を語る。
「そして…その真実を知る、唯一の手がかりが…」
エリック老人の目が、真剣になる。
「…古代文明を滅亡に追いやった原因、それ自体に関わる、最も強力で危険な遺物…『滅亡の災厄』じゃ」
(滅亡の災厄…!)
ゲームで聞いたことのある名前だ。世界の根幹を揺るがす、最悪の遺物。
「『滅亡の災厄』は、貴方様が持つ古代魔法の力、そして、これまでに手に入れた全ての遺物…それらを合わせた以上の、絶大な力を持つと言われておる。それは、世界の法則そのものを破壊する力…そして、あの文明の滅亡の瞬間を記録した、最後の観測者…」
エリック老人は、『滅亡の災厄』の危険性と重要性を語った。
その遺物を手に入れれば、古代文明の滅亡の真実が分かる。
だが、その力は、世界を再び滅ぼす可能性さえある。
「ワシは…もう老いた。そして、ワシの力だけでは、『滅亡の災厄』を制御することはできぬ。だが…アルト公爵。貴方様ならば…」
エリック老人は、俺をじっと見つめた。
「貴方様こそ、古代魔法の真の継承者。二つの遺物と共鳴し、力を解放された。貴方様ならば、『滅亡の災厄』を見つけ出し、その力を制御できるかもしれん…あるいは…あの文明が犯した過ちを繰り返すことなく、滅亡の原因を解き明かし、克服できるかもしれん…!」
エリック老人は、俺に『滅亡の災厄』の遺物を探し出し、入手してほしいと依頼してきた。
彼の目的は、世界の救済なのか? それとも、個人的な悲願の成就なのか?
俺は、エリック老人の真の目的、古代文明の最大の謎、『滅亡の災厄』の存在と危険性、そして、それが待ち受けるであろう、レガリア帝国や宗教組織といった、さらなる大規模な争いを理解した。
世界の命運。危険な遺物。そして、俺の力。
これまでの面倒事のスケールを遥かに超える、最終的な課題が提示されたのだ。
リリアーナ、ミュウ、シルヴィアは、エリック老人の告白を、緊張した面持ちで聞いていた。
彼女たちの顔には、驚愕と、そして俺を案じる気持ちが浮かんでいる。
エリック老人は、俺の返事を待っている。
『滅亡の災厄』の探索。
この依頼を受けるかどうか。
俺は、かつて追放された悪役王子。
だが、今は、世界の命運に関わる最終課題への選択を迫られている。
面倒なことこの上ない。
俺は、深いため息をついた。
そして、エリック老人の顔を見た。
この依頼を受けるか、それとも…。
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