第8話 陰陽(おんよう)は共生(きょうせい)する(4)
かつて暗闇と邪悪な気配に覆われていた魔域の跡地には、今では圧倒的な荒廃の光景が広がっている。
崩れかけた壁や倒れかけた塔が、血のような夕日の残照の中で孤独に立ち並んでいる。まるで無言の見張り人たちのように、かつての息をのむような天地を覆す大戦のことを静かに語りかけている。
砕けたレンガ一つ一つ、深い亀裂ひとつ一つが、時の傷跡のように、苦しみと闘いの歴史を刻みつけている。
楚颺(そ よう)と君長卿(くん ちょうけい)は静かにこの廃墟の上に座っている。周りの静けさはすべての音を飲み込むような存在感がある。
目の前には誘惑的な香りを放つ鳳凰醸が置かれている。その濃い酒の香りが空気中に広がり、この重苦しい雰囲気を払いのけようとしているかのようだ。また、脂がチリチリとこぼれる狐火で焼いた肉もある。脂が熱い炭火に落ちて、「チリチリ」という音を立て、この静かな風景に少しの生き生きとした雰囲気を加えている。
そよ風がそっと吹き抜け、少し涼しさを運んでくる。優しい手のようだが、二人の間に漂う複雑で言葉にしにくい気持ちをなくすことはできない。
「青鸞(せいらん)」楚颺はやっと沈黙を破った。彼女の声はこの広い静かな廃墟の中で際立って響き渡り、静かな湖に小石を投げ込んで波紋を立てるように、少しの迷いと困惑を感じさせる。「私たちのこの行いは、天道に背いていると思う?」
彼女は少し眉をひそめ、きれいな眉宇には未来に対する深い心配と思索がこもっている。数え切れない困難を乗り越え、道中の障害を切り裂いて、鳳凰と天魔という見かけ上相容れない二つの力の共生を実現した。
しかし、このような大きな変化は、神秘的で捉えどころのない天道のルールの中で、いったい何を意味するのだろうか。
天命に沿った革新なのか、それとも天道に逆らう冒険なのか。
この疑問は、重い石のように、楚颺の心の上にのしかかっている。
君長卿は眉を上げ、彼の華やかで長い9本の狐の尻尾が軽く揺れる。まるで9本の器用なテープのようだ。そのうち一本の尻尾の先が器用な指のように、酒のひょうたんを軽やかに巻き上げる。
彼は頭を仰げて酒を一口飲み込み、酒が喉を通り抜ける。俊敏な口角に笑みが浮かんだ。
「天道?昔、鳳凰族と狐族が誓ったとき、陰陽共生の運命はすでに決まっていたんだ。」
彼の目は目の前のこの荒廃した廃墟を越え、遠くの雲霧に包まれた神界の天門に向かう。そこは夕日の照らしを浴びて、神秘的で聖なる光りを放っている。新しい秩序と希望の誕生を象徴している。「それに、今の天道は、君の弟子が鎮めているんだから。」
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