第2話 新しい人生の始まり(2)
「玖月(くづき)、楚(そ)さんを迎えに行かないと。」明染(めい せん)は軽やかな足取りで、まるで春風のように静かに鳳玖月(ほう くづき)のそばにやってきた。
彼の顔には暖かい笑顔が広がっており、その笑顔は春の太陽のように、人の心の底にある暗雲を吹き飛ばし、果てしない暖かさと希望をもたらす。
彼は手に一枚の玉简を差し出した。玉简は質感が温かく、まるで大自然が育んだ宝物のようだ。上面には楚颺(そ よう)の伝音が刻まれており、そのなじみ深い筆跡は、一筆一画に楚颺の洒落た雰囲気と放縦さが感じられ、一目でわかる。
「今日は10年の約束だって。もう少しで遅れたら、青雲宗の山門を壊すって言ってたよ。」明染は半分冗談を交えてからかって、目には笑みがこぼれ、すでに楚颺の元気いっぱいでちょっといたずらっこな姿が目に浮かんでいるようだ。
その玉简の一文字一文字は、まるで楚颺が耳元でささやくような感じで、彼女特有の個性と魅力を備えており、皆を次の出会いに対して心待ちにさせる。
鳳玖月は軽くうなずき、彼女の目は玉简の上の美しい鳳凰の模様にとまった。その模様は生き生きと彫られており、鳳凰の羽ひとつひとつが風に吹かれているように見え、羽ばたこうとする姿勢には果てしない生命力と力が宿っている。
その模様を見て、鳳玖月の思いは自然と3年前に飛んでいった。あの時、魔域が崩壊し、天地はまるで大災害を経験したかのようで、すべてが混乱と動揺の中に陥った。
まるで世界全体がその瞬間に覆され、暗闇がすべての隅を覆い、恐怖が人々の心の中で広がった。
楚颺が去る際、目は強くて少し名残惜しそうな表情をして、最後の一言を残した。「小鳳凰(こほうおう)、青鸞(せいらん)を面倒見てくれるか。いつも私の酒をこっそり飲んでしまうんだから。」
楚颺の声はまだ耳元に響いているようで、その特有の親しみと託しの気持ちが、烙印のように深く鳳玖月の心に刻まれた。
この言葉は、単なる託しの言葉ではなく、彼女たちの深い友情の証拠でもある。それは過去に共に経験した苦しみを背負い、また未来の出会いに対する期待を伝えている。
鳳玖月は楚颺の去ることがもっと重要な使命のためだとよく知っているが、この友情は古酒のように、時間が経つにつれてますますこくなる。
その頃、万妖林の奥深くでは、静かで神秘的な雰囲気が重い幕のように、この大地をしっかりと覆っている。
背の高い木々が日を遮り、太陽の光は葉の隙間からしか漏れず、まるで地面に夢幻的な星空の図を描いている。
この静かな森の中で、君長卿(くん ちょうけい)は酒のひょうたんを抱えてのんびりと居眠りをしている。彼の9本の狐の尻尾は真っ白な雲のように軽く揺れ、一本一本の狐の尻尾には柔らかい光が放たれ、狐族の神秘と高貴さを語りかけているようだ。
その光は、月の光の下の銀の紗のように、優しくて神秘的で、彼に何か超凡脱俗した雰囲気を与えている。
突然、一筋の金色の光が流星のように空を横切り、瞬間にこの静けさを打ち破った。金色の光が通ったところ、空間がまるで引き裂かれるように、軽い轟音を立てた。
まるで稲妻が暗い夜空を切り裂いたかのように、万妖林全体が震えた。鳳玖月と明染は空を踏んでやってきた、まるで仙人が世に降臨したかのように、体の周りに強大で穏やかな雰囲気を放っている。
彼らの姿は金色の光の中で見え隠れし、神話の仙人が凡界に降臨するように、この神秘的な森に別格の生命力と活力をもたらした。
「青鸞(せいらん)お兄さん」鳳玖月は笑顔で酒のひょうたんを差し出し、目には器用な光が輝いており、まるで夜空に輝く星のようだ。
「楚(そ)さんが言ってたんです。今回の鳳凰醸には魔域の黒蓮が入っていて、百年酔えるって。」
彼女の声は澄んできれいで、果てしない喜びと期待を感じさせる。その酒のひょうたんは古風なデザインで、表面には美しい呪文が刻まれており、ほのかに神秘的な力を放っている。
これらの呪文は、まるで古代の呪文のように、天地の神秘を秘めており、この酒のひょうたんに神秘的な色彩を添えている。
君長卿は眉をひそめ、目に驚きの色が走った、まるで世の中で最も素敵なニュースを聞いたかのようだ。彼は手を伸ばして酒のひょうたんを受け取り、動作は優雅で敏捷だった。
その時、彼の目が突然沈六(しん ろく)の手首につけているトーテムに止まり、表情が少し緊張した。そのトーテムから発散する気配が、彼に潜在的な危険を感じさせた。
「この子は、これからは魔域に近づかない方がいい。」
彼の口調には少し心配が滲み出し、目には沈六への配慮が見える。魔域の力は神秘的で邪悪で、今の沈六が平凡な生活を送っていても、その巫族のトーテムが彼と魔域の間の切り離せないつながりになるかもしれない。少しでも油断すると、彼を再び危険の中に巻き込む可能性がある。
君長卿は魔域の恐ろしさをよく知っている。彼は沈六がこのトーテムのせいで危険な目に遭うことを望んでいない。この心配は、彼が沈六を家族のように大切に思っているからだ。
そう言って、君長卿は指先で地面を軽く触れた。瞬間に、狐火が勢いよく燃え上がった。その狐火は幽藍色の光を放ち、神秘的で熱い、まるですべての暗闇と邪悪を燃やしてしまうことができる。
狐火は迅速に広がり、地面に複雑で神秘的な転送陣を描いた。転送陣の上の呪文は奇妙な光を放ち、まるで天地の神秘的な力と呼応している。
一つ一つの呪文は、神秘的なシンボルのように、未知の力を宿し、彼らの進む方向を指し示している。
「行こう、楚(そ)さんが神界で待っているんだ。」君長卿は言って、目に期待があふれている。彼は知っている、今度の出会いが、また新しい物語の始まりになるかもしれない。
皆は目で合図し、目にはチャンスと決意があり、そして転送陣に乗った。
光が一閃し、彼らの姿は徐々に消え、未知で期待に満ちた神界の旅に向かって出発した......
そして、遥かな神界では、どんな奇妙な物語が彼らを待っているのだろうか。新しい挑戦か、それとも意外な驚きか。
すべては神秘と未知に満ちている、夜空の星のように、彼らが探し求めることを待っている。
一つ一つの星には、誰も知らない秘密が隠されているかもしれない。一つ一つの探検は、予想外の収穫をもたらすかもしれない。
彼らは未来への憧れとお互いの信頼を持って、勇気を出して未知の世界に向かい、彼らだけの伝説の物語を書き続ける。
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