第4話
埋蔵金と島の掟
「おい、優弥〜!まだ寝ちょるか!朝っぱらから海が呼んどるぞ〜!」
ガラガラっと襖を開けて飛び込んできたのは春吉だった。相変わらず眉毛のない顔で、笑うと悪戯好きの小鬼みたいに見える。
「ちょ……いきなり開けんな。おれ、まだパンツ一丁やぞ……」
「パンツぐらいええわい。こっちは命張ってんじゃ。今朝また波打ち際にK国の荷が流れ着いちょった。ウチらのシノギも潮の流れ次第で博打よのう。でや、例のアレ、どうするんじゃ?掘るんか、掘らんのか」
優弥は布団から顔を出し、真剣な目で春吉を見る。
「……やる。ガチで掘る」
「おおっ、よっしゃ!じゃあまずはイナばあから聞いた伝説の場所を地図に起こして——って、おいおい、そこ、リゾート予定地やんけ」
「は?」
「肇んとこや。アイツ、島にテーマパーク建てるっちゅうて地面まで買い取っとるぞ」
「マジかよ……」
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その頃、港。
フェリーから吐き出されるようにして島に降り立ったスーツ姿の若い男。長谷部だ。
「うわ、潮くせぇ……てか、ネットも繋がんねぇのかよ……」
見渡してもコンビニひとつ見当たらない。唯一の案内所で受付に声をかけると、やってきたのは島の役人・大江田だった。
「……で?あんたがその、借金取り? 東京の」
「は、はい。あの、優弥という方の——」
「ふぅ〜ん……で、取り立てるんか?ここで?」
大江田の目が笑っていない。むしろ「面倒が増えた」と顔に書いてある。
「ここはな、観光で来るとこでも、ましてや追い詰めるとこでもなか。トラブルは勘弁してくれよ」
「え、でも、俺、仕事で……」
「まぁ、泊まるとこぐらいは紹介しちゃる。ほれ、お〜〜い、肇さん呼んでくれぇ!」
数分後、砂埃を巻き上げて現れたのは、真っ白な開襟シャツに金のネックレスをぶら下げた男——肇だった。
「おぉ〜!よう来たなぁ!借金取りか?はっはっは!おれがこの島の“キング”や。泊まるとこ、ワシのホテル使わしちゃる。……ただし、今夜はカラオケナイトやけどな!」
「え、あの……できれば静かな……」
「無理じゃぁ!島はワシの庭!ルールはワシが決めるんじゃ〜!はっはっは!」
完全にペースを握られ、早くも胃が痛む長谷部。
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