寄り道#8 「傾く方向」
「明日からお盆だが、お盆明けすぐに合宿に行くから準備しとけよー」
今日の部活終わりに顧問がそう言った。
明日からお盆が始まる。
賢は家のリビングで机に突っ伏しながら悩んでいた。
(あしたからお盆だけど和には一緒に過ごす家族がいないかもしれない)
(それでまた和が元気じゃなくなったら、)
(いやでも変にうちに来ないかとか言って誘ったら施設のこと知ったのバレそうだし、)
「母さん!」
「うわっちょっとなに?!」
食器を洗っていた賢の母は驚いて皿を滑らせる。
「明後日ちょっと和と遊んできて良い」
「良いけど、その日は親戚の家に━━」
「ありがとう」
賢はそうとだけ言って自分の部屋に駆け上がって行った。
「賢、なんか変わったかしら...?」
和は今日の部活が終わってから市民ラウンジで勉強をしていた。
二次関数の最大最小、むずいな。
そう頭を悩ませていると後ろから肩を突かれた。
「うぇっ、なに」
「ちょっ和静かに」
静かな市民ラウンジに和の情けない声が響いた。
「賢が驚かしたんじゃん」
「ごめん」
すると賢は和の耳元で
「明後日一緒に勉強しにカフェいかない」
と言った。
和は賢の顔を手で押し返した。
「あっいや勉強頑張ってるかなどうかなーって」
賢は和に施設のことを勘づかれたかと焦ってそう言った。
和はほんの少し顔を赤くしている。
「いやその部活終わりだからあんまり近いと、」
和はシャーペンをいじって喉を詰まらせている。
「その、まんまりいい匂いしないから、」
賢は和の言葉を聞いて胸を撫で下ろした。
「いやべつに嗅がないよ。犬じゃないし」
「僕がいやなんだって」
和は照れて数学の参考書に目を戻す。
結局二人は8月13日に学校の近くにあるカフェで勉強することになった。
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