質問#12 「片想いの質問」

祭りの中心部から少しづつ離れ、街も少しづつ静かになっていく。


夕日が建物の間に隠れ始め、僕たちを赤く照らした。


「ねぇ和、また賢のこと教えてあげようか?」


「和が俺によく質問してくると思ったら、宗介が俺の話ばっか和としてるからなのか」


僕は、さっきの賢の言葉がまだ心のどこかに引っかかって二人の顔を見れない。


「賢のタイプの人はね、髪が長くて清楚っぽい人なんだよ」


「おいっ何言ってんだよ」


賢と宗介か取っ組み合う。


太陽は地平線にかかり、少しして姿を消した。


「和?」


黙っている僕を、賢と宗介は取っ組み合ったまま覗いた。


「いいね。髪が長くて綺麗な人」


僕は笑顔で賢の肩を叩いた。


「もっと早く言ってくれたらいろんな人紹介できたのにー」


日が沈んであたりは薄暗くなってきていた。




「ばいばーい」


宗介とは駅に向かう途中で別れた。


そこから駅に着くまで、僕と賢は何も喋らなかった。


駅に着くと僕は財布を出した。


定期券をお願いするのを忘れていた。


僕と賢は券売機に足を進める。


すると、改札口の先でキスをしている男女が目に入った。


「永仁だ」


賢はそう言って改札口の先を見る。



『お金を入れてください』



僕の頭には券売機の機械音声だけが響いた。


620円


その表示だけを僕は見つめる。


「気づかれたら邪魔になっちゃうね」


僕はそう言い、そそくさとお金を入れた。


ウィーン


券売機から出た乗車券を手にとり、僕は改札口に向かう。


永仁はもういなくなっていた。


僕は改札口を抜け、1歩歩いて止まった。


賢にまた質問してみよう。

賢はどう思うかって。

嫌かって。

気持ち悪いかって。


そう思い、僕が振り返った瞬間、僕が聞くよりも前に


「来年は和も彼女とかと一緒に祭りに行けるといいね」


と言った。


ガタンガタンガタン━━━


別方面行きの電車が後ろの駅のホームを通過する。


「....そうだね」


僕はそう言ってホームの方を向き、2歩目、3歩目を踏み出す。


「また明日ー!」


少しづつ小さくなる賢。


素敵な笑顔で手を振っていた。


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