学校で1番普通の女の子から【強制ラブコメ】させられたけど案外悪くない
箒
1部1章 仲間を集めたい!
第0話 青春ラブコメがしたい!
数多くあるラブコメの中で、ヒロインが美少女でない作品など一体どこにあるのだろうか。
しかし、一度ラブコメの定義を正した時に『美少女が主人公に惚れてしまう』と言うのがラブコメであるのなら、ヒロインが美少女でない作品が一つもないことに無理はない。
では、もしそれがラブコメの定義だとしたのなら、僕たちのこれはラブコメとは言えないだろ。『偽造ラブコメ』とでも勝手に呼ばせてもらう。
忘れ物を取りに帰り、1年1組の教室へ戻ると僕の机の上にある女が座っていた。
逆光で顔は見えないのだが、おそらく可愛い。
「遅かったじゃない」
彼女は僕に『遅かった』と言った。
しかし僕はこの女を待たせた覚えはない。
「島田
僕はこの瞬間理解した。
『ああ、とうとう僕にも』
僕、島田影真はこれまで普通以外の何物でない人生だった。
待ちわびていたのだ。こうして美少女(見えてはいないがおそらく)に、ひょんなことから関係を持ち、周囲を巻き込みながら非日常を繰り広げる。
そんな青春を。
「そ、それよりまずは名乗ったらどうなんだ?」
「そうね。
はいきた。
こんなヘンテコな苗字、圧倒的なネームドキャラじゃん。
なんだよ朱屋敷って。
僕は名前を聞き、即座にイエスと言いたかったが、ここで舐められてはいけないと思った。
主人公はいつだって、億劫で気だるげなのだ。
「…何を言ってるかさっぱりわからなん」
陽七海は足を組み直し、髪の毛を指でくるくるさせながら言った。
「あなた、自分の人生に満足してる?
あたしはしてないわ。高校生になったらなにか楽しい部活に勧誘されたり、生徒会に入ったりすると思っていたわ。でも、ここ一か月何も起きなかった。
待っていたらいつまでたっても何も起きないのよ」
より深いことを言っている。
随分と文学的な美少女もいるもんだ。
普通ならここで『なぜ僕を選んだ』と聞くと思うが、考え直され、他の人をあたられると困るのでそういうことは口にしなかった。
「ぐ、具体的に何をするんだ?」
「だから、青春ラブコメよ」
「僕と君が付き合うのか?」
「プロデュースしあうのよ」
言っている意味が分からなかったが、ここで『意味が分からない』と伝えて、考え直され、他の人をあたれられるのは困るので口にはしなかった。
まあ、破天荒ヒロインと言うのも、悪くない。
「むしろ、いい。」
「? なにがよ、」
「いや、なんでもない」
逆光で神々しさのある美少女ヒナミであるが、もしかすると新手の詐欺かもしれないと頭によぎる。が、しかし。
そんなのはもう考えるのを辞めた。
僕はこれで主人公になれるのだから。
「で、一緒にやる?」
「ああ、いいだろう」
「え、本当に?」
「そうだ。本当だ。」
僕はヒナミに近づく。
探していた忘れ物を取りに行かなくてはだし、ついでにその美貌でも拝んでおこうかと、一目見ておこうかと思った。のだ。
だんだんと光が外れる。
すると、目の前に現れた女はいたって普通の『微少女』だった。
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