霊界エクスプレス
@shigeru000furuse
第1話 突如として美少女が???
これからお話することは、今となっては遠い昔の話になってしまったが、私がこの時代に生きた証として残しておきたいと思う。あまりに長い記録なので細かな描写は削って、こんなことがあったよ――みたいな感じで話して行きたいとおもう。
結婚して落ち着き、何年か経(た)った頃だった――。
ある日、俺の寝所に一人の女性がぶらりと現れた。その女性の訪れは、その後の不思議な世界への旅立ちを予感させるものだった。
俺はその日、すでに床に入っていた。うつらうつらしていると、知らないうちに異次元世界へと入りこんでいた。
真っ暗闇の世界だが、霊が来ていることはすぐにわかる。凄まじい霊気を感じるのだ。ふつうの幽霊でないことはその霊気の強さでわかった。低級霊ではこれほどの強力な霊気を発することは出来ない。
〈いつものホモだちだな〉そう思った俺はすぐさま戦闘態勢を整える。一応奴らも強い力をもっている。弱い奴らならば俺もそう手こずりはしない。
――戦いが開始される――
霊と戦う場合、念力合戦となる。お互いの念力をぶつけ合い、まるでシーソーゲームのように、押しつ押されつして、相手を圧倒しなければならないのだ。
この日、霊は正々堂々と戦いを挑んできた。いつもならば、姑息な手段を用いてくるのだが……これは面白い。真っ向から戦ってやる。
念力の応酬が始まった。
――強い!――
私は今まで何度も背後霊に勝ったことがある。負けることもしばしばだったが、今日はそれ以上の強さを感じる。
念力がぶつかり合う――。
ここでいう“念力”とは超能力のことではない。腹式呼吸をして腹にグッと力を入れると発せられるパワーのことだ。これがこの世界では力を発揮する。
しばらく押し合いへし合いしていたが、ついに戦いが膠着状態となり、どうやっても相手を上回るパワーを出すことが出来なくなった。
膠着状態となったので仕方なく様子を見ることにしたが、こちらから攻撃しない限り、向こうからは何もしてこない。
〈おかしい……? 何か妙だ……〉
彼奴(あいつ)らだったらこんなことはない。あの手この手でしつこく攻めてくるはずだ。
〈まてよ!〉もしかしてこれは女の霊ではないのか?
そういえばまったく敵意は感じられない。まろやかな暖かささえ感じる。
暗闇で相手がまったく見えないので、試しに霊の胸のあたりを触ってみることにした。
手が俺の肉体から離れた。
ややこしいが、肉体から幽体の方の手が離れたというわけだ。
幽体の手がスーッと気持ちよく抜け出て(肉体は死んだようにピクリとも動かない)暗闇にあるらしい霊の胸を触った。
〈おお・・!〉福よかな胸の感触が伝わってくるではないか。
〈こ、これは・・ヒョッとして・・久しぶりの女か!〉女と来ればアレしかないではないか・・。霊であれ人間であれ、男と女に変わりはないのだ。
俺は欲望の赴くままーー女の霊に襲いかかった。
手に続いて〈霊体〉のほうも、完全に肉体から離脱することができた。
♥金縛りの状態から何分かすると、肉体の束縛から解放され、幽体(霊体)が分離し肉体から抜け出すことができる。これが所謂(いわゆる)『幽体離脱』である。元々、異次元世界の住人であったーー〈霊)つまり俺たちが、三次元世界(人間界・現世)で生き抜くためには〈肉体〉という宇宙服のようなものが必要なのだ。潜水服だと思ってもらってもいい。肉体という箱の中に収められているのが、俺たち人間の魂なのだ♥
幽体がフワリと宙に浮き、左まわりに抜けながら、霊の背後にスルリと回りこむ――。
目に飛び込んできた光景は――。
――床にペタリと座り込み、あどけない表情で肩越しにこちらを覗き込む、一人の少女だった。
どう間違っても女とは呼べないーーいやいやこれではどう考えたってロリコン少女ではないか!
アニメ美少女のような愛らしい顔立ちに、抜けるような白い肌ーーいや、もしかしたらピンク色のようでもある。人間では決して創ることのできない造形美だ。
どうやら幼なそうに見えるが、どうやら高級霊であるらしい。それは、身体が光沢を帯びていて、内側から光を発しているように、暗闇に浮かび上がって見えることから、普通の霊とは言えなかった。
〈美しい!〉俺は口をだらしなく開けて、しばらく呆(ほう)けて見ていた。
間違いなく俺の人生の中で、これほど美しい女性(ひと)に出会ったことはなかった。
俺の動きを追うように、ちょっとあどけない顔をこちらへと向けてきた彼女の、細い腕と細い腰・・背中からお尻・・太股にかけての流線的なラインを、今でもはっきりと覚えている。顔だけは少女であっても身体は完璧な女だった。
背後を取ったことで俺は完全に優位に立ち、背中あたりから女の体にむしゃぶりついた。
俺はすでに野獣と化していた。そう――俺は野獣なのだ。出すのが目的だ。
ところがなかなか挿入口が見つからない。なんども突っついては見たが、上手くいかない。
女は従順だ だまって俺の行為を楽しんでいるようだ。
更に突っつき回してみたが、やっぱり駄目だった。
端から見たら滑稽ではあったろうが。すると――
〈エッ?〉と、彼女の首がない事に気がついた。
何で?と思ってよく見ると、前屈みになった首が、壁にめり込んでいるのだ。外からだとーー首が家から〈ニョキッ〉と生えているようにみえただろう。この世界ではよくあることだがーー霊体はどこでもすり抜けてしまうので、こうなってしまうのだ。
ところがここで一度、現実にもどってしまった。
この異次元世界に長くとどまるには、自分のいる世界に意識を集中し、けっして元の世界のことを考えてはならない。また呼吸法が悪いと、呼吸困難の苦しさから元に戻ってしまう。霊とセックスをするときも、あまりの気持ちよさに、意識が遠のいてしまっても現実にもどるのだ。
ーー現実に戻った俺は、すぐまた向こう側の世界にいく準備をはじめた。頭がすっきりして、完全に目が覚めてしまったらもうだめだ。
ーー頭をボウーッとさせたまま、女と戯れている妄想を抱く。
いつの間にか俺は、気がつかないうちに、向こうがわの世界に入っていた。
女はまだ居てくれた。俺たちは恋人同士のように寄り添っていた。数分以内に入ることができれば、同じ場所に入ることができる。これは夢と同じ原理で、皆さんも一度くらいは経験がないだろうか?
そしてまた俺は女の尻を突つき回していた。情けないことに、これが一向に入らない。かといって嫌がっている風でもなく、むしろ俺とのじゃれ合いを楽しんでいるかのようである。
その悠然たる態度と、常ならざる気品が、俺を異次元世界へと引きずり込んでいったのかも知れない。 俺はついに降参して、彼女に〈入れてくれ・・〉と力なく頼んだ。
女は少し視線を落とし、自分の凹と俺の凸を見たが、涼しい顔してそれを無視した。
ここで俺は、初めて彼女と正対した。しかし何故か決して視線を合わせようとしないが、満更でもないようだった。
それよりも俺はーー視界に映し出された、彼女のピンク色に輝く美しく清らかな全裸姿に、心奪われていた。
まるでビーナス像のような究極の造形美は、今まであった女の幽霊やR界の女たちなどとは、明らかに一線を画していた。
〈この女性(ひと)何者なんだろう?〉俺は素直にそう思った。
見とれているうち 俺の心の中にある変化が起っていた。
そうだーー俺はこの女を探し続けていたのだ。
「おまえが好きなんだ! 好きなんだよ……」
今更ながら赤面してしまうが、これしか言えず、叫びと言っても良かった。
愛おしげに頬ずりしたとき、耳たぶに固い金属の冷たい感触がした。彼女は大きめの凝った彫刻をほどこしたイヤリングをしていたのだ。耳たぶとイヤリングがもみくちゃにされ、〈ちぎれたらどうしよう……〉と心の中で呟いた。
彼女はくすぐったいのか照れているのかーー首をすぼめて「エヘッ」と愛らしく笑った。
――ふと顔を上げてみると、彼女はいつの間にか部屋の出口のほうに移動していた。
俺は愛しさのままに追いかけていった。その時、左回りに旋回しつつ映りこんだ部屋の中に、別の男の霊がいることに気がついた。霊と言ってもこの世界にいる場合、普通に人間にしか見えない。
その男は烏帽子に狩衣といった、典型的な平安貴族のかっこうをしていた。ただ、カッコよく着こなしているのとは程遠く――取り敢えず他に着るものがないから着ているーー程度のものだ。
男は太めで豪放、太っ腹な感じであり、俺にかなりの好感を持っているらしかった。
そして俺をみて、「ワハハハハッ!」と笑った。
一応手に笏(しやく)を持ってはいるが、貴族というよりも山男といった感じだ。
ひょっとして最初からいたのだろうか? 全部見られていた?
だが、この時俺の心の中には、懐かしい友に出くわたかのような、不思議な親近感が湧き起こっていたのだった。それらを一瞬に想いながら出口に立つと、女はドアの外に佇んで俺を待っていた。
俺の気持ちが通じたかのように、少女は妙にしっとりと立っていた。
そして、ようやく決心がついたのか、おもむろに俺に抱きついてきた。
ピョンっと抱きついてきた瞬間ーー彼女の中に俺が入っていた。ユーカリの樹にしがみつくコアラのように、上半身に両足を絡ませ抱きついていた。
彼女は両手を首にまわし愛おしげに俺を抱きしめてくれた。
異なる次元に住む二人が、こうやって抱きあってい
この体勢はーー少しでも動いたり踵を上下動するだけで、直ぐに快感に変化する。あともう少し・・というところでーー。
残酷なことに、これをやっかむ他の霊の仕業か、単なる物理現象なのか、部屋に置いてあるテレビが「ピシッ」と音をたてたのだ。
ハッとした俺は瞬く間に現実世界へ引き戻されてしまった。
この後、奮闘してみたのだが、どう頑張っても元いた世界へ行くことはできなかった。頭がスッキリしてしまっているので、再度の挑戦は難しいのだ。
長年の背後霊との深い確執の中で、姫以外に心を通わせるかも知れない霊にあったのは初めてだった。
スケベな主人公と絶世の美女、そして豪快な狩衣男。まるでアドベンチャーゲームの世界ではないか!
R界の水先案内人となってくれる新たな仲間が加わったことで、バラ色の世界が見えた気がしたのだったが・・。
彼女は不思議な女だ。この後、十数年に渡って悩んできたのだが、彼女の正体は杳(よう)として知れなかった。
女はその日だけ現れ、忽然とまた姿を消した。全く不思議すぎる女だ・・。
♥これは本当にあったことなのだが、夢・妄想などと思われるのがオチである。それを実証する術はないが、夢は誰でも見ることができる。果たしてそれは妄想、夢幻しなのであろうか……。自分の見た夢と照らし合わせて考えてもらいたいと思う♥
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