パーティをクビになった魔法使い、開拓パーティに再雇用される

プロローグ

「お前はクビだ」


「本当に役立たず。それでお金貰って恥ずかしくないのが信じられないわ」


「さっさと消えろ」



 俺がパーティにそう宣告されて追い出されたのがついひと月前。


 後方支援の魔法使いをしていたのだが、俺の働きではあのパーティではまるで役に立てていなかったらしい。


 実際、魔法を使えると言っても俺が得意なのは研究の方で、冒険者のパーティには向いていなかったのだろう。


 魔獣との戦闘では速度がものを言う。魔法の研究の知識より、実際必要なのは戦闘でいかに魔法を使うかと言う感性だ。


 俺では、冒険者の戦いに付いていけなかったのだ。


 悲しい話だ。しかし事実だった。


 俺は実力不足を感じつつ、パーティを後にしたのだ。


 そして、今こうして酒場で飲んだくれていた。



「くそぉ、これからどうすれば良いんだ」



 俺ことログ・ジーンヒルドは半泣きでうめいていた。



「兄ちゃん、ちょっと飲み過ぎだよ」


「これが飲まずにいられるか」



 酒場の親父が俺の心配をしてくれるが、飲まずにはいられなかった。


 だって、もう路銀が尽きてきている。路銀が尽きれば俺は行き倒れる。せめて最後に飲みたいだけ酒を飲んでやると言う所存だった。



「兄ちゃん冒険者じゃないのかい? その腕章、冒険者のだろう?」


「はははははは.....。パーティをクビになったんだ」


「クビに!? そりゃまずいこと聞いちゃったかな.....」



 親父が急に声のボリュームを落としていく。やめろ憐れむな。こっちはこれでも精一杯生きてきたんだっつーの。



「で、次のパーティには入れないの?」


「俺が役立たずだっていう噂が広まってるから誰も雇わない」


「兄ちゃん役立たずなのかい!?」


「あんまり大きい声で言わないでくれ親父」


「ああ、すまん」


「得手不得手の問題だよ。俺は魔法の研究はそこそこ出来るんだけど。冒険で必要なのは研究力じゃなくて戦闘力だから。向いてないんだよ....」


「ははぁ、なるほど。じゃあ王都の魔法研究局に就職するのはどうなんだい?」


「あそこは魔法学院をトップで突破したようなエリートたちが集まるんだよ。俺みたいに趣味で研究に勤しんでるやつには無理」


「兄ちゃんの頭じゃ無理ってことかい」


「さっきから親父なんか俺バカにしてる?」



 酒を飲みながら親父とくだらない問答を繰り広げる。末期といった感じだ。俺の人生は落下し続け留まるところを知らない。まさに落伍者。悲しい人間である。



「毎日ここに来てるけど、金は大丈夫なのかい?」


「もうダメ」


「もうダメなのかい!? うーん、うちの皿洗いでなら雇ってやらんこともないけど」


「ほほほ、本当に? 本当にか?」


「食いつきがすごいね。よっぽど限界なんだね」



 A級パーティの魔法使いから酒場の皿洗いにジョブチェンジ。壮絶な話だが背に腹は代えられない。皿洗いだって立派な仕事だ。職業差別は良くない。というか、なにがなんでも金が欲しい。このままでは行き倒れてしまう。皿洗いでもなんでも良いから仕事が欲しい。


 と、その時だった。



「いらっしゃい」



 新たな来店者だった。


 店の中は昼から酒を飲むダメ人間であふれているが、また仲間が一人増えたらしい。



「おや、お嬢ちゃん。うちみたいな店に来るなんて店を間違ってるんじゃないのかい?」



 見れば、そこに居たのは長いプラチナブロンドの髪が美しい美少女だった。小脇に剣、腕には冒険者の腕章。どうやら剣士の冒険者らしい。



「仲間は酒場で探すものだと聞いた」


「そりゃ一昔前まではそうだったけどね。今はギルドの掲示板で探した方が良いよ。今は飲んだくれしか居ないんだから」



 昔は酒場と言えば交流の場であり、冒険者が仲間を募る場ではあった。しかし、ギルドが公序良俗を整えるべく、リクルートの流れを整備したためわざわざ酒場で仲間を探すものはもういない。



「そうだよ、仲間ならギルドに行った方が良いよ。ここにはこんな風な堕落した冒険者しか居ないからねぇ。げへへ」



 俺はあまりにも卑屈に笑った。腕章を見れば青の線が入っている。世間知らずだがどうやらAA級冒険者。俺にとっては天上の存在だ。そんな神様が来る場所じゃないし、そんな神様に釣り合う人間はここには居ない。



「ほう、あなたは冒険者なのか」


「ついこの前パーティをクビになって、今まさに行き倒れしかけのねぇ、けひひ」


「おい、兄ちゃん卑屈になりすぎだよ。皿洗いで雇ってやるって」


「その話頼むよ」



 半ば泣きそうになりながら親父に言う。



「ふむ、魔法使いか」


「え?」


「あなたのまとっている魔力、魔法を使うものの色だ。あなたは魔法使いだろう」 


「へぇ、魔力が見えるのか」



 さすがはAA級と言ったところか。剣士といえど魔力を見れるのか。



「マスター」


「俺の事かい? マスターって言われたの初めてだな」


「皿洗いの雇用契約のさなか申し訳ない。彼を私のパーティで雇いたいのだが」


「なんで!!???」



 あまりにも唐突な申し出に俺は叫んだ。

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