小話 メテオスピカ


「ところでメテオ」

「なんスか旦那?」

「お前のそのスカート、なんとかならないのか」

「なんとか?」

「……ズボン、とか」

「この船スカートしか無いんで」

「そうか……」


 今更ながら、メテオスピカことオレの服装は他のスピカと同じ、セーラー服にスカートだ。


 おかしい?

 それはまあ分かる。オレの意味記憶にも、男性は普通ズボン……パンツ……、ボトムス? を履くものだとある。

 しかしオレはスピカ・スペアの一員。制服マニュアルを乱すことなどできない。


 だからオレはずっと、このまま一生、スカートだ。


「……せめてスネ毛は剃らないか?」

「剃ったほうがいいスか?」

「…………恐らく」


 剃るべき、かも? そこまで言われるとそんな気がしてきた。


 そもそも、ウチにカミソリとか有るんだろうか。

 だってスピカ・スペアのみんな足ツルツルだもん。






「カミソリもあるし、除毛剤もあるよ」


 ドクターに相談すると、あった。


「あと、それほど濃くはないけど、みんなスネ毛あります」


 あるんだ。


 ***


「うわ〜〜ん、オレの右手いたいいたい」

「お〜、良いところに実験体が来た来た」


 右手に穴が空いたので泣きながらシュガーホイールをうろちょろしていると、ちょうど工房の前に来た。すると扉の前に立っていたメカニックが話しかけてくる。


「実験体? 何やらされるの?」

「カリュード氏の手足からサイバネティクス技術を学んだんで、試作品を作ってみたんスよ〜。この腕を取り付ければ貴方も立派なサイボーグ! どう、試してみない?」

「う〜〜ん……痛い?」

「麻酔もサービスしますよお客さ〜ん」

「あらお得」


 がしゃーん ごしゃーん 

 オレの右手はかっこいいロボ腕になった。

 指を擦るたび、鈍い金属音が鳴る!


 旦那に見せると、なんかしばらく固まっていた。


「……普通、手を切る手術なんて抵抗があると思うんだが」


 サイボーグにロボ腕をドン引きされた。

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