救えない話がしたい(題名未定)
その辺に咲いてる花
夏
伊原美緒。16歳。高校2年生。
趣味は勉強、ボランティア。
生徒会所属。次期生徒会長候補。
友達思いで、誰にでも優しい。
頭脳明晰、才色兼備。
…というのが、私の印象らしい。
人通りの少なくなってきた道で、大きめのため息をついた。
かなり馬鹿馬鹿しい話だ。
ちなみに、頭脳明晰〜とか、才色兼備〜とか、自意識過剰、ってわけではない。
ちゃんと聞いたのだ。この耳で。名前付きで。
そのあとの「絶対私達のこと下に見てるよね」という悪意のこもった声も。
そう思うなら自分たちもやればいいのに、なんてクソ真面目に考えていたときもあった。そんなことを考えるのは無駄だってことに気が付いたのはわりと最近の話。
そして趣味については全くの嘘っぱちである。
本気でボランティアが趣味ですよ〜なんて人、この世にいるのだろうか。
私は、いないと思う。
いたとしても、きっと“人助けをする自分”に酔っているイタい奴らだろう。
まあかくいう私も、成績とか自己満足のためにやっているわけだからあまり文句は言えないのだけれど…。
そんなことをダラダラ考えているうちにいつの間にか家に着いていた。
鞄から鍵を取り出して、一軒家である我が家の扉を開ける。
何も言わずに靴を脱ぎ、手を洗って階段を登り、閉まっている部屋に向かって「ただいまー!」と声を放った。
数秒待っていると、不貞腐れたような声で小さく「おかえり…」と帰ってきた。
よし、今日もちゃんと生きてる。
妹…沙良が外に出なくなってからどのくらい経っただろう。
確か沙良が中学校に入ってからしばらくしたタイミングだから…。ちょうど、2年前くらいか。
今年は受験生だというのに、どうするつもりなんだろう。…なんて、こんなことを考えるのもきっと負担になるだろう。
半分ぐらいは、私の責任みたいなものだし。
私の部屋である隣の扉開け、入ってからすぐ扉の内側に低いテーブルを置いた。
本当は鍵をつけたいんだけど、昔それを言ったら母親が「子供部屋に鍵だなんて!」とヒステリックを起こしたため、適当に荷物を置くことにしている。
お世辞にも重い机とは言えないないし、簡単に開けられるんだろうけど無いよりはマシだ。主に精神面に。
口から気の抜けた声を漏らしながら制服にシワがつくのにも構わずベッドに倒れ込む。
今日から夏休みだ。
夏休みは部活が〜、と嘆くクラスメイトを置いてさっさと帰るこの爽快さ!
皆で一つのことに打ち込む、ということに憧れを持たなかったわけではないけれど、やっぱり自分には合わないだろうなぁ、なんてクーラーのガンガンに効いた部屋で考える。
そんなことをしているうちに、段々と思考がぼやけて…
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます