第11話 大爆発

このままじゃおじいちゃんが殺されちゃう!!

近づこうにも黒服の男に羽交い締めにされてタイムマシンに近づくことができなかった。

諒も同じように拘束されている。


愛はさっきから茫然自失状態で、少しも動ける気配じゃなかった。

あの男を乗せたタイムマシンが光り輝き、そして過去へ戻る……その寸前のことだった。

「大切なものを守ります」

ハルが呟いた。


「まだ言ってるのか」

黒服の男がせせら笑う。

私は切ない気持ちでハルを見つめた。

ハルの役目は大切なものを守ること。

そしてもうひとつはタイムマシンを破壊することだったはずだ。

だけどタイムマシンを破壊すれば、ハルは……。


《ハルはタイムマシーンを守ることと、破壊することのためだけにワシが作った。ハルは使命を果たしたとき、その動きを生涯止めることになる》

ハルは動かなくなってしまう!

「ダメ! やめてハル!」

「タイムマシンを破壊します」


いつも青いハルの目が突如赤色に変化した。

同時にハルがタイムマシンへ向けて右手をかざす。

その手のひらの中央からタイムマシンへと真っ直ぐに赤い光線が伸びた。

光線はタイムマシンに仕掛けられている装置に作動し、カチッと音が響く。

次の瞬間だった。


鼓膜が敗れるほどの轟音と目が潰れるほどの光が地下室にあふれていた。

その音と光が一瞬で消え去り、再び静寂と薄暗がりが戻ってくる。

けれどその一瞬でタイムマシンは粉々に砕け散り、中にいた愛の父親だけがその場に残されていたのだ。


おじいちゃんは中に人がいても怪我をしないように、破壊装置を作っていたみたいだ。

最後の最後までおじいちゃんは優しい人だったんだ。

そうわかると胸の奥が熱くなり、涙が出てきた。


「なんだとぉぉ!!」

愛の父親が雄叫びを上げる中、私はハルに近づいた。

ハルは右手を上げたまま動かない。

目に光はなく、真っ黒だ。

「ハル、お願い動いて!」


ハルの背中を叩いてみても反応はない。

だけど長くここにいることもできなかった。

逆上した愛の父親が黒服の男から拳銃を奪い取ったのだ。

その銃口がこちらを向いている。

「私の研究を無にしやがって!」


唾を撒き散らしながら叫び、引き金に指をかける。

「お父さんやめて!!」

引き金が引かれるのと愛が私の前に飛び出してくるのがほぼ同時だった。

私の前で愛がゆうくりと横倒しに倒れていく。


愛の向こう側に立つ男が目を丸くしてそれを見つめ、そして力の抜けた手から拳銃を落とした。

そのすべてがスローモーションのように見えていた。

「愛!!」


とっさにかがみ込んだ私に愛が苦しげな顔を向けてくる。

「逃げて!」

最後の力を振り絞り、叫ぶ。

「そんな、嘘だろ」


愛の父親は自分の娘を撃ってしまったことに動揺し、その場で頭を抱えている。

「行こう、真子」

呆然とする中、諒に腕を引っ張られて私は地下室から外へと脱出したのだった。


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