岩上智春の献立帖

心夢宇宙

第0項 岩上智春の献立帖

 岩上智春がんじょうともはるは長生きしたい。それは元カノの一人に、『神秘的なものへのなんとなく信仰』を完全否定された事に端を発する。当時は彼も彼女も幼くて、未熟な思春期であったから、くだらない事で諍ったりしたのだが、その中の一つがそれだった。

 彼女は完全リアリスト。死後の世界など認めない。何となくの神秘を否定する。それは岩上が『作値問下』という集団の代表、『受事触真』から、『中道』の話を聞くまでずっと続いた観念だった。『受事触真』は言う。『死んだら終わりという考えも、全ては永遠だという考えも、どちらも極端なものです。心の平静を手に入れるには、極端を経験した上で、そのどちらも信じ、そのどちらも否定するような、一般的な矛盾対立から離れた重ね合わせの状態に至るのが一つ有効な方法、考え方になります』。

 岩上はそれ以来、唯物的な無神論者を半ばやめている。それはそれとして、彼がそうなる以前、健康長寿に長生きする為に自らで考えた幾つかの献立は、今も続けている。何故ならそれは、単に『習慣を変えるまでもない』と一度習慣を変えてから帰結したことと、そしてなんと『受事触真』もそれらの献立をほぼそっくりそのまま思いついていたというのが理由としては大きい。

 そもそも岩上はその点で『受事触真』と意気投合したのだ。だから今では、『受事触真』と共に、互いに考え収斂進化の様にいきついた献立を、『献立帖』にする作業を暇な時間に進めている。『受事触真』はこれに何色を示したが──曰く、文字として残す事が必ずしもよいこと、ただしいこと、やさしいことではない、などと言っていたが──岩上はこれを押し切り、『受事触真』を巻き込んだ『献立帖』づくりに邁進するのであった。


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※当連載もフィクションであり、実在の人物、団体、宗教、その他あらゆものとは一切関係がありません。

※登場人物の考えが作者の考えであるとは限りません。

※当連載も私之プロフィールは『登録サイトサービス一覧』等に記載されているwebサイト等で同時掲載されている場合があります。それ以外のwebサイト等には掲載・投稿しておりません。

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