第56話

「旬君の…」




園長は言いづらそうにうつむく。




「林原さん‥旬君のお父様が決めたの。」



「え、待ってください。面接の時、旬君のお父様は居なかったですよね?」




そうだよ。


いくら保護者とはいえ、まさか職員の面接に顔を出すなんかありえないでしょ…?




「いらしてたのよ。梨子先生応募者達の後ろに。」



「嘘…」



「林原さんには、沢山の支援金を頂いてるのは前にも話してるでしょ。ありがたいんだけど…それと引き換えに何かを要求してくる事があるの…。最初は小さな事だったんだけど、その時はたまたま面接を見てみたいと仰ってね…。私も断れなくて。」



「そうだったんですね。」



権力者には逆らえないのは確かにそうだし、園長の気持ちも分かる。




「それでね、その面接時に、あなたを見つけて心を奪われたらしいの。」






ん?



はい?

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