第5話 虚偽

あの一夜のあと、ずっとソワソワしている。

あの時の虚しさ、悲しさ、高揚全てが一気に

おしかけてくる。


朝になり、春馬が起こす前に起きた。

「五月さん、早いっすね」

「寝れなくてな、ちいと早く目が覚めたんじゃ」

「ん?広島弁出てますよ?」

「あ、まじか、まーしゃーないやろ!」

少女の広島弁が移ったのだ。

「今日からなんか、結構な案件らしいですよ?

多分五月さんの苦手な部類の仕事らしいっす。」

「ほんまに?、ぶちたいぎいわ」

「なんか、射殺じゃなくて接近で捕獲らしいっす!」

「世界で1番嫌いじゃ」

「まあ、指示があると思いますよ」

「なけりゃ、動けんじゃろ!」


朝礼がはじまる、

「本日は2名のうち、どっちかは捕獲して拷問しても情報を、吐かせろ

この2名だ。」

対象の写真が並べられた

二人とも中年の韓国人だそうだ。


「五月頼むぞ、苦手だと思うが」

「はい…」


本当に苦手な仕事だ…。


夜の難波、また、金と女の夜が動く。


街を回る。

少女がいないことを祈る。

みられるわけにはいかないからだ。

「はぁ、憂鬱だなぁー」

「確かにそうですねぇー」


左衛門町を、歩く

キャバクラの姉ちゃん、バーの姉ちゃん、コンカフェの店員、いろいろな人がいる中二人を探す。


いた、対象だ。


「やるか…」

「そうっすね」


「처음 뵙겠습니다. こんにちわー」

「뭐야 何だ!」

「우선 침묵하자 とりあえず…黙ろうか」

すぐに喉を潰し、声を出させない。

すぐに首を締め、動かなくなる。

殺してはない…

「미안해.… ごめんね…」

「五月さんってめっちゃ強くないっすか?

え、何で苦手なんっすか

韓国語ペラペラだし何なんですか?」

「苦手なだけで、できないわけではない」


カンカンカン

何か落ちる音がした、

「え、何しよるん…え、何なん?」


ゾッとした、

その声はこの前もきき、ずっと求めていた声、

「ゆうかさん…」

「え、喧嘩?ちょっとやりすぎじゃろ…」

「五月さんみられましたよ、どうします!」

どうしよ、どうすれば、

迷うな、迷うことなんかないだろ

いや、迷っている。

「春馬、少し外せ、ちいと話してくる」

「え、…はい」

少女の肩に手を回し、少し離す。


「少し酔っててな、気を失ったから、看病してたんよ。

こいつ俺らが安全な場所に連れて行くけえ、

この件に黙ってくれる?」

「う、うん」

「春馬ーー」

二人で対象を運ぶ。


「大丈夫なんですか?」

「何もみてないって、それなら何でもいいじゃろ…」

多分みていた

確認すればよかったただ少女に対して

巻き込みたくないなどの感情であると言い聞かせた

本当は、その先の事を、知ってしまった見てしまった人をどうするか知っているからだ


そう私は、自分に、春馬に虚偽をしたのだ。


「五月、あの動き普通じゃないじゃろ…

ほんまに何者なん…」


そう、これが最悪な虚偽になり

このせいで運命が変わるのだ。




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