第33話

時計の針は午後8時を過ぎたところか。ダンジョンから戻ってきて、燐さんと静流さんとピザを食べて、駅で別れて家に帰ってきた。

さっきまで騒がしかったことを思うと、一人暮らしの部屋はなんだかいつもより静かに感じるな。


今日のピザは美味かったな。燐さんにも静流さんにも好評だったようで良かった。

そういえば静流さんは燐さんのことを

「本当に飲み込みが早いです。最初は戸惑いが見えましたが、すぐにゴブリンの動きを覚えて、ハンマーの振り方一つとっても無駄がありませんでした。それに、魔物の攻撃を避けながら、こちらの攻撃に繋げる体捌きも、初めての探索者とは思えないほどスムーズでしたし、状況判断の速さにも驚きました」

とかベタ褒めだったな。

あと、燐さんの魔力量についても触れてたっけ。

「おそらく、簡易測定器で測定できる範囲を大きく上回っていたのだと思います。私の感知では、間違いなく私よりもかなり多いはずです」

って言ってたな。詳しい数値は郵送の結果を待つしかないってことだったけど。

日本のトップ層の人間にそんなこと言われて燐さんは目を白黒させてたっけ。対して静流さんは今後の燐さんの成長に期待してるような、そんな顔してたな。


来週、また三人でダンジョンに潜る約束もした。燐さんもやる気満々だったし、静流さんも「いい経験になります」って快く引き受けてくれた。能力バレを警戒してソロでずっとやってきたが、こんな風に仲間とワイワイやるのもやっぱ良いよな。


ぼんやりと今日の出来事を反芻していると、ふと、思い出したことがあった。


「そういえば、俺の魔力測定結果の通知も届いてたっけ?まだ見てないけど」


正規ランク試験の時に受けた魔力測定だが、結果は後日郵送、と言われていたのをすっかり忘れていた。

最近ほったらかしだったポストを確認しに行くと、各種チラシやDMに埋もれた中から、見慣れない白いハガキを発見する。差出人の欄には、「IR-DMA」の文字。これだ。


リビングに戻り、ぺりぺりとはがきをめくり中身を確認する。


「魔力濃度:900MU」


…900MU?これってどんなもんなんだ?

そういえばちゃんとした測定器ができたのって半年ぐらい前だっけ?それまでは「魔力の数値化」については色んな情報が錯綜しててよくわからんかったから、なんとなくのその話題は避けてたんだよなぁ


スマホを取り出し、検索窓に「魔力濃度 MU 平均」と打ち込んだところ、探索者の魔力量に関するまとめサイトやIR-DMAが公開している基礎知識のページがヒットする。


平準魔力濃度に最大魔力濃度…え?魔力に平準とか最大とかあったの?


なになに、平準魔力濃度は普段から保有している平均的な魔力のことで、集中して瞬時に引き出せる魔力の最大量か。

知らんかった…俺の場合

「どれだけあるかよくわからない魔力を加減しながら纏う」

っていうやり方だったからなぁ「魔力の濃度を上げる」なんてやり方があったとは。


お、ケルベロスとかも載ってるな。こいつが最大1,800MUか。こいつの半分、と意識して魔力を纏って900MUだったなら、調整自体はうまくいってたってことだな。


あ、静流さんの魔力濃度が載ってる。どれどれ…


「明鏡院静流:平準500MU、最大1,100MU」


「…静流さんで平準が500MU?」


俺は自分の結果をもう一度見直した。900MU。えーと、これ平準と最大どっちだ?あ、下に小さく「これは平準魔力濃度です」って注釈があった。


「倍まではいかないにしても、俺、多すぎないか…?」


もうちょっと調べてみよう。

え~と、一般的な探索者の平準魔力濃度は100~400MU程度の人がほとんどで、最大魔力濃度は魔力の扱いが上手い人でその倍ぐらい、と。で、国内トップ10とかの探索者でようやく平準が1,000MUを超えるかどうかのレベルか。


え、俺国内トップ10近いの…?

うわぁ、調整自体はうまくいったのに、基準にすべきやつを間違ってしまっていたか…

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