第24話

異次元資源開発管理庁 安全対策局 探索者管理課……やっぱ長い。異次元資源開発管理庁は「IR-DMA」なんて洒落た名前でも呼ばれているけれど、俺がかかわるのは同庁の探索者管理課だけだろうし、通称である探索者ギルドと呼……いや、これでも長いな。「ギルド」だけでいっか。うん、そう呼ぼう。


で、そのギルドからのハガキに記載されていた専用Webサイトで予約を済ませ、指定された日時に会場へと足を運んだ。


そう、悩んだ末に1級の正規ランク試験を受けることにしたのだ。1級探索者は全国で約5千人ってニュースでやっていたので、そこまで目立たないだろうという判断だ。


会場といっても役所の会議室の一室で、そこには既に4名の探索者が座っていた。若い男女が3人と、身長190cmはあるゴリマッチョでいかつい老人が1人。なんか「歴戦の戦士」って感じだ。威圧感がすごい。

そんな4人と俺を含めて、この回の受験参加者は計5名らしい。

意外と少ないと思ったが、1級ならそんなものか。


そして時間になり、部屋のドアが開いて担当者が入ってきた。

現れたのは、切れ長の目に知的な雰囲気、ダークグレーのスーツを完璧に着こなした、いかにも有能そうな女性。「バリキャリ」という言葉が具現化したような人だ。


「皆様、本日は異次元資源開発管理庁、正規ランク説明会及び正規ランク認定試験にお越しいただきありがとうございます。わたくし、本説明会の担当を務めさせていただきます、獅子ヶ関ししがせき 麗沙れいさと申します」


なんか強そうな名前だな…


「さて、説明会を開始する前に、一部の方に別途ご確認いただきたい事項があるため、一旦中断させていただきます」


ん?中断?なんで?まさか、また何か問題でも起きたのか?


その言葉の最中に、すでに職員が動いていた。

参加者のうち3名に何人もの職員の手が素早く伸ばされ、鈍い金属音と共に手錠がかけられる。

手錠っていうより拘束具?一抱えもあるような鉄塊のようなもので、手を曲げた状態で肘ごと固定されている。


……しかしよかった。俺は関係なかったらしい。


「3名には魔石の不正な流通に関与した疑いで逮捕状が出ています」


そういえば、少し前の法改正で、こんな感じの不意打ち逮捕後の告知が認められるようになったんだっけ。

逮捕告知した時点で魔力を纏って逃げたり暴れたりする探索者が頻発したからなぁ…ダンジョン外で身体強化を行ったところで10秒と持たないが、悪あがきする分には十分だからな。


逮捕された3人も抵抗しようとしたようだが、流石にあの鉄塊の拘束具をどうにもできず、すぐに取り押さえられ、手押し車に乗せられて部屋から連行されていった。

…そうか、拘束具をはめたときは職員が身体強化を使っていたが、それが切れたら、あんな重いもの持ち上げるのも一苦労だもんな。


騒ぎが収まった部屋には俺と、傍らで一連の逮捕劇を全く動じることなく見守っていたゴリマッチョでいかつい雰囲気の老人、そして獅子ヶ関さんだけだ。


「逮捕された方々は、先ほどご説明した容疑が濃厚であった人物です。お二方については、データ上も、また事前の調査でも問題ございません。この場に巻き込んでしまったのは完全にイレギュラーです。」


さっき言っていた「魔石の不正な流通」ってのは、いわゆる「売り子」って奴だろう。

魔石の買取は政府が一括して行っているが、ダンジョン自体は全てを把握できているわけではなく、その一部は反社会的勢力が管理しているという。

で、その反社が魔石を換金するのに雇う闇バイトを「売り子」って呼んでいるらしい。

そういえばこの命名のせいで、同人誌即売会の売り子をネットで募集したら警察が来た、なんて笑えない話もあったっけ。


「ふむ。あ奴らは明らかに実力以上の納品状況だったこと、反社構成員との接触していたこと、金の流れの確認ができたことから逮捕された、というところかな?」


なるほど、明確な証拠があったから逮捕状が出たってことか。


「…既におじい様は警視庁を退職された身。捜査に関することはお答えできません」


おじい様!?このゴリマッチョでいかつい老人が、あのバリキャリ獅子ヶ関 麗沙さんの祖父!?見た目のギャップが凄すぎるだろ!


「まぁそれもそうだな…それより先ほどの動きはなかなか良かった。部下たちをよく鍛えておるな」


孫娘を評価するような口ぶり。やっぱり祖父なんだ…


「ありがとうございます。それよりおじい様、本当に認定試験を受けられるのですか?もう古希こきを迎えられたのですから、あまり無理なさらないほうがいいのでは?」


「ふん、それを言うなら先に豪一郎兄や豪次郎兄に言うんだな。三男のワシが先にリタイヤしてはあの二人に笑われるわ」


「…分かりました。ですが、どうぞご無理なさらずに。本日の試験も、お手柔らかにお願いします。」


え、古希ってことは70歳超え?しかもこんなのが後二人もいるの?強者感が尋常じゃないな。こわぁ…


さぁ、今のところ能力がバレる心配はなさそうだが、こんな状況で落ち着いて冷静に試験受けれるかな……?



------------------------------------------------------------

設定集に

・設定:日本政府の4年間の動き

・設定:異次元資源開発管理庁

・設定:明鏡院流

を追加しました。


https://kakuyomu.jp/works/16818622175361660166

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る