第22話

あれから数日後の食事会。最初は正直どうなることかと思ったんだけど、静流さんと駆瀬さん、タイプの違う二人だったが、びっくりするくらいあっという間に打ち解けてしまった。


最初こそ挨拶とか簡単な世間話とか硬い感じだったが、その後に共通の話題で盛り上がった。

そう、ダンジョンと、あと意外にも小説だ。


静流さんが魔力で周りの状況がわかるっていう話に駆瀬さんが食いついたのが最初だ。

「わかります、あの普通の五感とは違う感覚…!」

そこからダンジョンでの経験とか、魔力の感じ方とかで盛り上がってた。

俺?俺はまあ「へぇ~」「そうなんですね~」って相槌打ってるだけだよ!だって、下手なこと言って俺の能力がバレても嫌だし…

ダンジョン話でエンジンかかった後「ほかの趣味は?」って話になり、そのまま小説の話に突入。

駆瀬さんが「最近これ面白くて!」って作品名出すと、静流さんが「あ、それ私もオーディオブックで聞いてます!」って返したり、お互いの好きなジャンルとか作家とか話が尽きることはなかった。

一応俺も好きなウェブ小説の話をちょっと挟んでみたんだけど、なんかあんまりピンときてない感じだったんで早々に諦めて聞き役に徹しました。

ちゃんとしたオーディオブックは専門の俳優や声優さんが読んでたりするからな。それに慣れるとアプリの読み上げ機能じゃ物足りなくなるから読んでいなくても仕方ない。うん。


そんな感じで、俺が横で料理をモグモグしてる間に、二人の間の空気はどんどん柔らかくなって、まるで昔からの友達みたいになっていた。

いや、ほんとすごいコミュ力だな。俺も見習いたい…と思わないところが、俺のダメなとこなんだろうな。


で、食事が終わる頃には、なぜか話は「今度一緒にダンジョンへ行こう!」って流れになってて。

最初は静流さんが駆瀬さんを誘ったんだけど、あれよあれよという間に「深洞さんも!」「3人で!」ってことになり。

俺は「え、俺も行くんですか…?」と思ったものの、もう断れる雰囲気じゃなかった。

静流さんにはポーター壊した負い目があるし、駆瀬さんもここで断って職場での雰囲気が悪くなるのも嫌だし。仕方ない、観念するか…。

しかし行くダンジョン、万博ダンジョンより魔物強いっぽいけど駆瀬さん大丈夫なんだろうか…?


まあ、なんだかんだで、食事会自体は楽しかったんだと思う。後で静流さんと駆瀬さんからも「楽しかったです!」ってメッセージ来たし。二人が仲良くなれたので良かったとしよう。


で、その食事会から帰って家のポストを確認すると、異次元資源開発管理庁 安全対策局 探索者管理課…長いな…通称「探索者ギルド」からハガキが届いていた。

圧着されてるハガキをめくるとそこには


『探索者ランク制度 新設のお知らせ および 暫定ランク認定について』


あー、そういえばニュースでやってたな。


探索者の能力(戦闘、知識、状況判断)、経験、実績、及び安全意識を客観的に評価し、探索可能なエリアを明確に定めるための国家資格制度


なんだとか。無謀な探索をちょっとでも減らそうっていう施策らしい。

3級から始まって、準2、2、準1、1級と5段階になってる。英検か漢検かな?

んで、俺ら既存の探索者は、これまでの実績で暫定ランクが決まるとのこと。

といっても期間内に試験とか受けないと3級になってしまうらしいが。


で、俺の暫定ランクは…ハガキの見開き2ページ目にデカデカと書いてあったんだけど


【暫定ランク:1級】


……は?


いやいやいや、確かに魔石はそれなりに稼いできたけどホリデー探索者だぞ?

あ、計算式も載ってるな。どれどれ「基本評価ポイントは魔石の納品量÷探索時間」…なるほど、俺みたいに短時間でそこそこ稼ぐほうが評価が高くなるのか…

確かにそうじゃないとスライムしか出ない浅い層や安全地帯に長時間いるだけでランク上がっちゃうもんな。

「何層にいた」ってことが確認できればいいんだろうけど、現状だとドローンの動画を確認するしかないからな。そんなの何万人もチェックできないわな。


しかしこの1級ライセンス、めちゃくちゃメリットも大きいんだよな。

ハガキのランク説明見ると、1級ならソロでは限界があるものの、ほぼ無制限に深く潜っていいらしい。

つまり、これまで通り能力隠しながらコソコソ行ってた深い階層とかに堂々と行けるってことだ。


でも1級って目立つだろうなぁ…暫定とはいえソロで1級とか

「何者だあいつ?」

ってなるのでは?

別にちょっと噂されるぐらいならいいが、


メディアとか、

他のヤバい探索者とか、

政府関係者とか、


いろんな奴に目をつけられるたりしそうだよなぁ…

目立たず、ひっそり、安全に小遣い稼ぎ。時々冒険。これが俺のポリシーなのに…


自由に潜りたい。でも、目立ちたくない。


手の中のハガキが、俺の安寧を脅かす爆弾に見えてきた。


ハガキを握りしめて、俺は深い悩みの沼に再び、しかも盛大に沈んでいった。













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設定集を作ってみました。ひとまず登場人物まとめだけ。24話と同時に色々投稿予定です。

https://kakuyomu.jp/works/16818622175361660166

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