第26話式神の正体、葵の呪い
とりあえず……声の正体がわかったのは良かった。
でも、気づいてしまったのはなんで今の今まで気づかなかったのだろうか。
実際、ウチの式神なのにここまで気が付かなかったなんて……
「ごめんね……今まで気づいてやれなくて……」
「すぅ……すぅ……」
声の主はどうやら疲れて眠っているみたいだ。まあ……無事、ではなさそうだけどちゃんと形も保ってるし、人格も、無事そう。
だから、良かったか……
『そいつは、大丈夫だったか?』
「うん、なんとか大丈夫だったよ」
『そうか……』
カンナちゃんが心配してくれていた。
辛いことさせてごめん……あの時、ウチが葵ちゃんを説得出来てれば……
『それはどうでもいいんだ、そいつが無事ならな』
「ごめん……ありがとう」
『まあ、こいつに会わなくても多分葵は暴走するだろうとは思ってたよ。』
「それはウチも予想してた……」
『だから、これからこいつのことをどうするか決めないとな』
「そう……だよね」
どうするか……
そして、葵ちゃんに話しても恐らく暴走してしまうということは分かる。
この子をなんとかして守り抜きたい……でも、上手くいくのか……
いや、上手くいくとかそういう問題じゃない。なんとかして守り抜いて、葵ちゃんと一緒に暮らしていきたい……
それが、ウチの願いだ。
『聞きたかったんだが、いいか』
「うん、いいよ?」
というか、カンナちゃんどうしてウチに姿見せてくれないんだろ。
なにか、見せられない理由でもあるのかな?
確か、さっきモヤが薄くなってカンナちゃんの姿が見えていた気がするんだけど……
まだ隠すのかな?
カンナちゃんの姿……そして……
いや、いいか。
とりあえず、聞きたかったことってなんだろ。
『……姿を見せないのはただ見られたくないからだよ、悪いか?』
悪いわけじゃないけど、見ちゃだめなの?
『当たり前だ』
なーんだ。でも、一度でもいいから見てみたいな。
カンナちゃんの姿。
きっと、すっごく可愛い顔してるんだろうなぁ…
『うるせぇ……やめてくれ』
「はいはい。それで?教えてくれる?聞きたかったこと。」
『はぁ……ほんとお前はマイペースだな……』
なんか、怒られてる気がする。
でも、自然とこう……嫌な感じがしない。
呆れてる感じなんだろうけど、懐かしんでるウチがいるのもまた事実。
これは……どこから来る感情なんだろう……
やっぱり……前に感じたお母さんっぽい違和感って……これなのかな?
『あたしが聞きたかったことはな、いつからお前……あの声が聞こえてた』
いつから……
いつからって、多分式神の声のことかな。
まあ、それしか考えられないけど……
でも、そうか……
それも、言わなきゃいけないのか……
「いいよ。いいけど、条件がある」
『なんだ?』
「葵ちゃんの呪いは解けないの?」
『……』
だんまり……か。
それは難しそうっていう反応してるの丸わかりだから別に隠さなくてもいいのに……
『すまんな……でも、それはお前が話してからあたしも話すよ』
「わかった。」
『それじゃ、頼む。いつから聞こえるようになった。そして、その式神はどんなやつだ。』
頼む……か。
まあ、頼まれたならその頼みに応じるのみ。
だからこそ……ウチは答えなければならないのだろう。
声の事も、式神の事も。
「あの声の事だけど……実は、随分前から聞こえてたんだよね。」
『随分……前?』
「うん、神様の時……から、かれこれ五百年前かな」
『そんな……前から……なら、救ってやろうとか思わなかったのか?』
「思ったよ……思ったけど……その声を聞いてると……おかしくなりそうだった、ウチが…ウチで居られなくなりそうなくらいほんとに……辛かった。」
『それは……いや、その声は……どんな声だったんだ』
それを……聞かれちゃうか……
嫌……というか、ほんとに…思い出したくない。
思い出したくない所の話じゃない……実際、これはカンナちゃんや葵ちゃんに話してしまったらほんとに、ウチという人間はこういう人間だったのかと衝撃を与えてしまう……だから話せないのもある……
『どうした?それとも、話せないことでもあるのか?』
「……うん」
『どんな声か、気になるだけだ……ほんとに、聞けるものじゃないのか?』
「うん……ごめんね……全部話すって言ったのに……」
『わかった……いや、聞かせてもらう』
「……」
やはり……誤魔化しが聞かないのか……
それとも、やっぱり逃げられないと思った方がいいのか……
でも……ここで逃げたら、葵ちゃんから……カンナちゃんから……あの子から逃げた感じがするから……ここで向き合わないと、な。
「助けて……」
『ん?』
「助けてとか……楽にして、裁いて、解放して、殺して……殺して殺して……殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して………」
『……すまん』
「ううん……言えてよかったて……思った、だってこうして、カンナちゃんに伝えられたんだから……逃げなくてよかったんだ。」
『逃げる……か。』
うん、これで良かったんだよ。
逃げなんて、したくなかったからこれで……いいんだ。
殺して欲しいと言っていた声が……ぴたりと止んだのももしかしたらこうやって話せたから、なのかな。
分からない……けど、でも……ウチの中でなにか変わったのかな。
「それで……多分その声を発してたこの子は美桜だと思う。」
『みおか……だが、お前はどうするんだ?こみおのことを……ちゃんと、葵に説得とかするのか?できるか?』
「ウチは……出来れば葵ちゃんと一緒に美桜を幸せに……笑顔に出来たらいいなって思うよ。だから……もし、受け入れないとしてもちゃんと手段を考えるよ。」
そうしないと、またウチが背負い込み過ぎだって言われちゃうし、怒られるから……だからもう、葵ちゃんの悲しい顔は見たくないからね。
『わかった……だが……いや、あたしもなんだか、ここで諦めても意味は無いしな、話すよ葵の呪いのこと』
「いいの?」
『それが条件だったろ?まあ、話さなくてもいいのならいいが』
「いや話して、寧ろ葵ちゃんのことならなんでも知りたい」
『……お前、なんか変わったか?』
え?変わった……?
変わったって、どういう……
というか、ウチはウチのままな気がするんだけど?
もしかして……気持ちをちゃんと伝えられるようになったとか?
『まあいいよ。ほんとのところを言うと、あいつの呪い、西園寺家の呪いは解けることがない。まあ、察してる通りこの呪いはぶっちゃけ初代当主が作ってるものらしくてな、あたしも西園寺家の所にいた時はそれを施してるところを何度も見ていたよ。』
西園寺蒼月……ほんとに、厄介な事をしてくれた……
たけるのこともそうだし、愛莉ちゃんのこともそう。
皆、お前のせいで……不幸になっていく。
そして、それを全部あたしのせいにして……
ほんとにふざけるな……
でも、その呪いは多分……特殊な術式によって造られているんだろうな……だから、一生かかっても解けることがない。
だから、厄介なのか。
『まあ、方法はあるよ』
「え、あるの?」
『だが、それは禁忌という事にもなる。聞きたいか?』
「聞きたい。禁忌だとしても、葵ちゃんを傷つけないならなんでもする!」
『そうか……まあ、これは禁忌中の禁忌、失敗したら相応の代価が来ることになる。それは、契約の上書きだ。』
契約の上書き……
確かにそれは、神でも禁忌とされてるやつだ。
どこが禁忌というのかと言えば、全てが禁忌に触れている。
呪い……ここは西園寺家の呪いと言うことにしよう。
それに触れさせないよう、新たな縛りを作り自身に定着させ、式神を強引に契約させるのが契約の上書き。
「やるしか、ないの?」
『ああ。それしか、方法がない』
それなら……もう、迷う必要なんてないだろう。
ウチは葵ちゃんの式神として、主人を危険に晒さないために、傷つけないために、そしてもう悲しい顔にさせない為に。
「わかった、やろう」
美桜のために、カンナちゃんのために、そして葵ちゃんのために。
禁忌に触れよう。
to be continued
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