side 千夏 友人ふたりと。
【御影と】
「このハンドクリーム・・・いい匂い」
「本当?良かったぁ」
『御影のプレゼントすっごく悩んだから、そう言ってもらえて嬉しい』と千夏は言った
その表情があまりにも照れくさそうで、自分の気持ちを疑っているようなものだったから、御影は音を立てて椅子から立つと、ほんの少し前のめりになって『本当だよ』と言った
「本当に、千夏からプレゼントを貰えて、私、とても嬉しかったの」
「・・・本当に?」
「本当に」
カタン、と小さな音を立てて戻るように椅子に座れば『良かったぁ』なぁんて目の前から気の抜けた声
「御影が喜んでくれて私も嬉しいな」
『ありがとう、御影』なんてへらっと気の抜けた笑みで言われたら、ひとたまりもない。
御影は顔を耳まで真っ赤にして、サッと顔を逸らすと『あんまりこっちを見ないで』とだけ呟いた
「・・・ハンドクリーム、大切に使うね」
「うん、そうしてくれたら私も嬉しいな」
◇ * ◇
【雛那と】
「今日もあっついね〜!」
「はは、そうだね・・・」
学校が終わって帰ろうとした際、偶然居合わせた雛那がいた。
雛那は女子生徒達に囲まれていて、少し困った表情をしていたものだから、千夏はちょっぴり悩んだ末に雛那に声をかけることにした。すると雛那は瞳を輝かせて『待っていました救世主』とばかりに千夏の手首を握り、その場から一目散に駆け出したのだ。
「本当助かったよ〜、あの子たち、中等部からの付き合いの後輩たちだから無碍に出来なくってさ」
「そうだったんだね」
「そうなんだよ〜!」
『だから助かった!ありがとう!』そう言ってニカッと笑う雛那は正直眩しい。思わず千夏が呻くと、何か勘違いをしたらしい雛那は、ふと掴んでいた手首に目をやり『ごめん!痛かったよね』と言って、手を離した。
別にそんなに痛くなかったのに、本当に何処までも優しい友人だ
「そんなに痛くなかったから平気だよ」
「でも〜・・・、夏の肌に痕が残っちゃうのヤだし・・・!」
「私は気にしないから」
「・・・夏!」
『あーもう!大好き!何か冷たいものでも奢らせて!』と勢いよく抱きついてきた雛那に思わず蹈鞴を踏む。雛那は結構行動的な人間だなぁ、なんて思う。
そんなところが千夏にとっては羨ましい部分でもあるのだけれど
「じゃあさ、雛那が前に言ってた駅前のパフェ、わたしも気になるし、割り勘して一緒に食べよう?」
「夏にだったら、奢るよ?」
「そーゆー話じゃなくって!」
・・・ちょっと金銭感覚が狂ってるのが、少し問題ではあるのだけど
終
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