ヒトキリゲノム

かげりよの

序文 ヒトキリ講談

 時はあたかも夕暮れの、渋谷駅前交差点

 人の喧騒けんそう、車の往来、いずれも今はそこに無く


 時折響く銃声は、鐘の音に似て物凄く

 残虐非道ざんぎゃくひどうのテロが今、東京都内で起きていた


 十字の道路の中央に、一人佇むその隻影

 白皙はくせき、茶髪、剣は二本、あれぞ異国の女騎士


 此度のテロを企てた、イノセンティストの一味なり

 女は静かな闘志秘め、今か今かと敵を待つ


 果たして道の向こうから、歩き来たれる姿あり

 制帽せいぼう制服せいふく深緑ふかみどり獄吏ごくりのような服装で


 その服その顔血に濡らし、凄惨せいさん極まる格好の

 歳は弱冠十六歳、容貌秀麗好男子


 温厚柔和を絵に描いた、沁み入るような笑み浮かべ

 白鉄しろがね三尺機械の刀、プラズマブレード腰に差し


 歩き来たるは血風惨雨けっぷうざんう、人斬りゲノムに相違なし

 青年ぴたりと足を止め、笑顔で騎士に言葉を告げる


 騎士は言葉は不要とばかり、腰から二本の剣を抜く

 右にサーベル左にレイピア、攻防一如こうぼういちにょのその構え


 温和に微笑む青年も、得物の柄に手を掛けて

 焦熱しょうねつプラズマ迸る、紫焔しえんの刃を抜き放つ


 斜陽しゃよう赤光しゃっこう照らす中、二つの影は激突す

 炎刃一閃えんじんいっせんプラズマブレード、光跡こうせき描いて斬り込むが


 対する騎士は縦横無尽、演舞が如く身をかわす

 東京華場はなばの大辻で、騎士と人斬り大立ち回り


 一波いっぱ動いて万波ばんぱが動く、ゲノムの死闘の幕が開く

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