第22話 Anger and Anxity 3

#1

昨日と同じ今日ーー

レパートリーを口ずさんで見る。

ーー今日と同じ明日。

繰り返す毎日が……

「あ、駄目だ。「脱出」は使えない」

近付くには遅すぎた

貴方はもう目の前

……恋の歌、じゃ、駄目だな。

誰かの為に曲を選ぶって難しい。

病室の前の長椅子に座って居るとドクターとウェンディさんが出てきた。

「良いわよ。患者さんのOKでたわ」


#2

ドアを開けて入ると、16m²程の部屋に二列で8人程の患者さんが居た。

全員の視線がこっちを向いた。

「え、あ、アドストル大付属シーブルー高校の乙葉一音と言います」

「高校生。」

「ええ」

「何しに来たの?」

「皆さんに歌を届けようと思って」

「歌歌うの」

「届くかどうか心配だったんです」

「え?」

「安心しました」

「出られないわけじゃ無いから、歌は普通に聞くんだけど、まぁ、生歌もありかな」

「早速やってくんな」

「はい」

大きく息を吸い込む。


#3

席を外して病室の外。

「当たり障りの無いイベントですね」

「ステージ2だから未だ未だ健常」

「……突然凶暴化するような事は?」

「無いし、対策もしてあります」

「……無理か」


#4

灰色 暗い日 雲が 閉ざす

光は 遠くて 重たい 日々

冷たい 雨音 雨は 流れて

辿る 道行き 何処へ 向かう

飛び起き 駆け出す 光を 探して

牢獄 破って 自由な 地平へ

彼方へと向かう この歌と共に

旅立つよ一人 日の当たる場所へ

あがった。

即興だった。

歌って頭が空白に成った。

何がしたかったのかよく分からなくなった。

歌唱力は如何にと言って自信が有った訳ではない。寧ろ素人臭いのではなかったかと思う。今出来る精一杯だった。

「はい、御苦労様」

ドクターとウェンディさんが入って来た。

「あ、はい。有難うございます」

「先生、慰問は良いけど私らーー」

「良くなってるんでしょうか」

ドクターは曖昧な笑顔を浮かべて、

「抗生物質は効いてますよ」

「そうですか」

「悪くなるんじゃないかと不安で」

「特効薬も開発されてるから大丈夫」

「特効薬か。」

「ええ」

「開発されたのか。」

「ラカイユの研究所でね」

「ラカイユ。」

「だからそんなに心配しない」

「警戒はしても良い。我々も約定の許す限り繁殖する。邪魔をするようなら対抗もする」

「ファクトリア!?」

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