第34話 冥界王の短剣
壺から声が此処まで聞こえて来た。
『贄だ、贄を寄越すのだ』
この間、32人の贄を渡したのに、もう次を求めている様だった。
二人は逢瀬を重ねた後で眠っている。
丁度良い。
俺は冥界神パズーデス様の壺がある部屋を訪ねる事にした。
「冥界神様、この間32人もの贄を捧げたと思うのですが……」
『お前を冥界王にしてやったのだ……贄を多く寄越しても良いと思うのだが……何故感謝せぬのだ……』
冥界王?
俺のジョブは冥界の騎士の筈だ。
それが王? わけがわからない。
「私がなんで冥界王なのでしょうか?」
『冥界王の短剣を授けたであろうが! あの短剣こそが冥界の王になれる切符なのだ! 死んだ者は全てお前の手下に出来る。あらたに部下を増やし君臨するが良い! 贄もお前達が用意しなくても手下にした者に用意させれば良かろうが……』
そうか、手下をこれで作って働かせればよいそういう事か?
確かに言われてみればそうだ。
「確かにそうですね」
『他に鉱物袋も授けたであろうが! あれから宝石を出せばお金も得られるし、貴重な金属からは武器が作れる。兵も財も武器も思うままだ。これが王で無くてなにが王なのだ』
「そのとおりですね! ですが冥界王とはまるで魔王みたいですね」
まさか近い存在じゃないよな。
『近くて遠い存在だな。魔王は邪神の下。お前は私の下だ。確かに今は胃袋と意識だけだが、私は死後の世界全てを支配していたのだ。そう考えたらお前は魔王以上と言える……それに今のお前は魔族だろうと勇者だろうと死んでしまえば全部お前の配下に出来るのだ。お前の方が上ではないか?』
そうか……そうだよな。
別に魔王以上の存在になろうとは思わないが、よく考えたら、この時代に会えない色々なキャラクターに会えるじゃないか。
「そうですね、早目に贄の用意をします。 あの一応聞いておきたいのですが贄は人間だけじゃなくても宜しいのですか?」
『私は魔族も食す。魔物は食べる事は食べるが美味しくないので人か魔族が良い……早目に持って来るが良い』
「解りました」
これはもう、用意するしかないな。
◆◆◆
オートナリウムに近い墓場にきた。
さて誰を蘇らせようか?
この世界のお墓は個人墓だからフルネームが書いてある。
折角だから、名が通った人間の方が良い。
誰か、いないかな?
街の場所からして、知っているキャラクターが居てもおかしくない。
一つ一つ墓石を見て行くと、見覚えのある名前を見つけた。
『英雄バニス、此処に眠る』
バニス?
この名前は知っている気がする。
いったいどういう英雄だっけ。
う~ん、考えてみるが思い出せない。
まぁ良い。
少なくとも英雄を名乗るのだから、普通の人間より良い筈だ。
俺は、墓をほり骨を探した。
一つ一つパーツを探していく。
その前にそう言えば『死体』と言っていたけど、骨でも大丈夫なのか?
まぁ良い。
とりあえず、試してみて無理なら次を考えれば良い。
どうやらパーツは揃っているみたいだ。
全部のパーツが揃ったので、骨として存在する一番大きなパーツ。
頭部に冥界王のナイフを突き刺す。
うごぉぉぉぉぉぉぉぉーー。
いきなり周りが暗くなり、その深淵とも言える黒さが増した部分から黒い固まりが現れた。
その黒い塊はやがて人の形になり奥へと歩いていった。
俺はどうすれば良いのか解らず、そのまま立ちすくんでいると、さっきの人の形の黒い塊が青い炎のような物を持ってきた。
その炎の様な物をバニスの骨に落した。
バニスの骨はみるみる受肉していき生前の姿に戻っていった。
ただ、体がなんだか青白い。
前の世界の幽霊の様な感じだ。
これから、どうすれば良いんだ?
不思議な事に服を来て装備も持っている。
「……」
「え~と、自己紹介とかして貰えるかな?」
「……」
どうやら喋れないようだ。
「え~と冥界神様に贄を渡さなくちゃいけないんだ! 盗賊か魔族を狩って来てくれないか?」
何も言わずバニスはいきなり走っていった。
家の場所もわからないで大丈夫なのかな?
まぁ良いや……此処で暫く待っていれば良いのか?
◆◆◆
暫く待っていたけど、バニスは戻って来なかった。
失敗したのかな?
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