第16話 人を殺す覚悟
湖で泳ぎ月明かりの中愛し合った。
月明かりに浮かぶルミナスさんの肢体は神秘的でいつも以上に綺麗だった。
そのせいか、月の光に狂わされいつも以上にお互いを求めあい貪るように快楽を求めあう。
どの位、体を重ねたのか解らない……体が冷えてきたので、抱き合うように宿屋に戻った。
冷めた体を温める為、宿に戻ると湯を沸かし二人して湯舟に浸かった。
充分温まったあと、そのままベッドに行き二人して毛布に包まる。
ルミナスさんが俺の腕の中に潜り込んで来たので、そのまま抱きしめ腕枕をする。
お互いに一糸纏わぬ姿で抱き合うと、お互いの心臓の鼓動だけが聞こえてくる。
それが何処か心地よい。
「激しいのも良いけど……こう言うのもいいわね」
ルミナスさんが俺の顔を覗き込む様に見つめてくる。
腕に力を込め強く抱きしめながら……
「腕の中にルミナスさんが居ると、うん、幸せな気持ちになるね」
そう答えた。
それを聞いたルミナスさんは顔を赤くし、はにかみながら……
「私も、こうしてハデルくんの腕の中にいると、心臓の音が聞こえてきて落ち着くわ」
と答えてくれた。
お互いに顔を見合わせ更に顏が赤くなる。
宝物を抱きしめるようにルミナスさんを抱きしめるとルミナスさんも俺を抱きしめてくれる。
二人して会話を紡いでいると、いつしか、心地よいなか自然と眠くなり……眠りについた。
◆◆◆
チュンチュン……鳥のさえずりが聞こえてくる。
腕の中にルミナスさんの重みが無い。
その事が凄く寂しく思えた。
また、夜になれば会える。
会えないのは昼間の時間だけ……
それが解っていても寂しい物は寂しい……
◆◆◆
冒険者ギルドに顔を出した。
「こちらが、報酬になります」
受付で貰った金額は予想通り金貨17枚だった。
これで、手に入れた15枚の金貨と併せて32枚(約320万円)が手に入った事になる。
「ありがとう」
「どう致しまして! それで、家の方ですが幾つか候補がありますが、早速見て見ますか?」
「何か掘り出し物はある?」
「う~ん、そうですね……まぁとりあえず、こちらに纏めて置いたので良かったら後で見て下さい」
「ありがとう!」
そう言って手を振りながらカウンターを後にした。
それもあるけど、今日は依頼書を見に来たんだ。
今回見に来たのは『盗賊の討伐』の仕事があるかどうかだ。
今はまだそこ迄は考えていないが、将来的には考える必要がある。
今、使っている『精気の指輪』そこから俺の体を通して僅かな精気をルミナスさんに受け渡す事と『冥婚の術式』の『理』で夜の時間この世界にルミナスさんは存在出来ている。
もし、大量の精気をルミナスさんに与える事が出来れば、昼間の時間も顕現した状態に出来るかも知れない。
大量の精気を手に入れる方法はある『人から取り上げればいい』簡単に言えば、殺してその人間の全部の精気を奪えば良い。
勿論、日本でそんな事をしたら大変だが、この世界では人権が無い人間がいる。
それが『盗賊を含む犯罪者』だ。
この世界の犯罪者は『簡単に人を殺す』だから、自衛の手段として『殺すしかない』から合法的に殺して問題ない。
また、この世界の盗賊の多くは『賞金首』だ。
殺して首をギルドに持ち込めば賞金が貰える。
俺からしたら、金が手に入り精気も手に入る一石二鳥の仕事だ。
見た感じ、数枚、盗賊の討伐依頼は貼りだされていた。
これなら、精気を手に入れるのは簡単だ。
ただ、問題はその精気をルミナスさんに与える道具だ。
『精気の指輪』は指輪の所有者の僅かな精気をルミナスさんに受け渡すだけの道具だからこれには使用できない。
どこかに他人の精気を奪いルミナスさんに与える事が出来るような道具があれば……ずうっとルミナスさんに存在して貰う事が出来るかも知れない。
少なくとも精気は手に入る方法がある。
道具がどうにかなれば、ルミナスさんと一日中一緒に過ごすのも可能かも知れない。
◆◆◆
俺に人が殺せるだろうか?
魔物を平気で殺す事が出来るがまだ、人間を殺した事は無い。
こればかりはやってみるしかない。
という訳でやって来たのは、とある村だ。
オートナリウムから歩いて2時間位。
目当ての村が……あれ!? ない。
此処には『盗賊の村』がゲームではあった。
元は普通の村だったが、盗賊に襲われる。
そして盗賊に占領されたなか、生きる為に盗賊の手下に全ての村人がなった。
それ以降、表向きはただの村。
ただ、知らずにその村に泊まったら、身ぐるみ剥がされて殺されてしまうという恐ろしい村になった。
俺がこんな事を知っているのはゲーム知識からだ。
だが、彼等が襲ってくるのは夜だから、昼間なら問題無い。
遠巻きに見るか村の入り口辺りで様子を見ようと思ったんだが廃村になっていた。
『剣と魔法と恋する世界』は長い年月を過ごすゲームだ。
この村が存在したのは、かなり前で、逃げたかもう当討伐された後なのかも知れない。
だが、折角だから、村の様子だけでも見ていくか?
そう思い、見ていくと家は朽ち果てていたが、家財用具や生活に必要な物はそのまま置いてあった。
って事は、逃げたって事だ。
此処がどんな場所だったか気になった俺はそのまま村の中を見て回った。
やはり何者かに襲われて逃げたようだ。
どこの家も何もかも放り投げて逃げたようにしか見えない。
ただ、家も家具も朽ち果てているから、この村から人が去ってから相当な月日が去っている筈だ。
村の中に不自然な石造りの倉庫の様な物があった。
慌てて逃げたなら、何か宝物が残っているかも……
そう思い中に入ったら…….うっ。
沢山の骨が転がっていた。
それらの骨の傍には鎖や首輪が転がっている。
理由は分からないが恐らくは人を閉じこめている。
『監禁小屋』だ。
こんな所を見ていても鬱になるだけだ。
出よう……そう思った時。
見覚えのある物を見つけた。
この鎖につながれた骨の近くに落ちている装備や衣類。
なんとなく見覚えがある。
傭兵で賞金稼ぎをしていたナルミーさんの装備だ。
そうすると、この鎖で繋がれた骨の人物はまさか、ナルミーさんか。
今の俺にはルミナスさんが居る。
だから、ナルミーさんを蘇らすような事はしないと思う。
だけど、このまま置いて行くのは可愛そうな気がした。
俺はナルミーさんの骨を収納袋に突っ込むと小屋を後にした。
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