ゆめのなか、君と交わした約束
森乃さんご
夢の中のみしらぬ街
クリスマスイブの夜、夢の中で待っています––––。
今日はクリスマスイブで、家族とケーキを食べたりクリスマスプレゼントをもらったりと楽しい一日だった。年に一度、街の中も家の中もきらきらの飾りで輝くそのイベントは、夢菜のお気に入りだ。ひとしきりはしゃいだ後でまぶたも重い。夢菜は明日の朝に見るクリスマスプレゼントを想像しながら、ベッドにもぐりこんだ。
その瞬間。夢菜の頭の中でその声が響いた。
クリスマスイブの夜、夢の中で待っています––––。
(なんだろう。聞いたことがあるような気がする。でも、思い出せない……)
よく考えようと思ったところで、すでに頭は眠ってしまっているようだった。まぶたが勝手に閉じていく。夢菜は深く考えることはせず、すぐに眠りに落ちた。
☆☆☆
「わ!」
気づくと、夢菜はキラキラと輝く場所の真ん中に立っていた。厚着をした人々が棒立ちの夢菜を避けて通り過ぎていく。呆然と立ち尽くしてしまっていたけれど、夢菜は慌てて道の端によった。改めてぐるりと辺りを見回す。
木の屋台が軒を連ねている。中ではお菓子やクリスマスの飾りが売っているのが見えた。屋台もそばに立つ街灯も、すべてが金色の光に包まれていた。夢菜はそれを、信じられない思いで見る。
(わたしはうちのベッドで眠ったはずなのに。どうして?)
その疑問に答えるようだった。再び、あの声が頭の中で響いた。
––––無事に来れたなら、大きなクリスマスツリーの下で。
「大きな、クリスマスツリー……」
人が多い。子供の夢菜は、すっぽりと人の波に飲まれてしまう。それでも必死に上を向いて、人以外を探す。
「あ……!」
(あれだ!)
本当に大きなクリスマスツリーだった。光をそこに集めたように、とても明るく金色の光をまとっていた。
あのクリスマスツリーの下に……!
人の波に乗ってツリーの下に着いた。ぐるりとそこにいる顔を見回すけれど、夢菜に気づいて手を上げるような人はいなかった。
「……」
元々ここもどこかわからないのだ。見知った顔がいる方がおかしい。
「おー、来た来た。もう来ないのかと思ってた」
「!」
慌てて振り向くと、そこには自分と同い年ぐらいの少年が立っていた。こちらを見て嬉しそうに笑っている。
「あなたは?」
「あぁ、そっか。覚えてないんだっけ?」
夢菜は少年のことを知らないのに、向こうは夢菜のことを知っているような、もう何度も会っているかのような口ぶりだ。少年はにっと笑って手を差し出す。
「オレ、レオン。君とはもう何回もこの街で会ってる」
「え?」
戸惑う夢菜の顔をレオンは小首をかしげてのぞき込んだ。
「ユメナでしょ。ほら、行こうよ」
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