お題288『一年中、雨が止まない街』

北前 憂

第1話

今日も、また雨が降る。


悲しみの雨。

嘆きの雨。

わたしは窓からぼんやりそれを眺める。


(また、誰かが旅に出て逝かれたのね)


降り止むことのないこの街の雨は、人が亡くなった時に、空から降り注ぐ。

まるでお空が泣いているように。


雨が降ると、わたしは祈りを捧げる。

迷うことなく、悔いを遺される事なく、どうか明るく、幸せな場所に逝かれます様に。


昔は、こんなに毎日降ることはなかった。

時々、穏やかだった空が曇って雨を降らすことはあった。

そのたびに人々は見知らぬ誰かの人生の終わりを手を合わせて弔った。


でも、今どのくらいの人がこの街に居るのかは知らない。

ここから見えるのは空と、空を覆う暗い雲だけ。


わたしは鉄格子の向こうの空を見つめる。

ひとつだけ開いた、わたしと世界を繋ぐたった一つの場所。

高い所にそれがある以外は、冷たい壁に覆われている。


「牢獄」

ここに連れて来た人達はそう言った。

だけどわたしは、そうは思わない。

だってこの場所は、わたしが祈りを捧げる事が出来る大切な空間だから。


わたしの祈りは、この鉄格子の向こうへきっと届いている。

そうしていつか、わたしの祈りが何処かへ届いたら。

悲しみの雨が止む時が来る。


わたしはそう信じている。






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る