第12話 気づきと誤解と恋心④ ※ちょいエロ表現あります。

「イアン・・・」

 唇に触れた肌はしっとりと甘く、アレキサンダーは目を閉じた。そのまま頬に置いた手をイアンの口元に滑らせ親指で唇をなぞると、わずかに開いた隙間に人差し指をゆっくりと差し込む。

「っん、ん・・・」とイアンの花唇から吐息が漏れる。

 アレキサンダーはゴクリと喉を鳴らすと中指を添えてさらに奥へと挿入した。

 熱い咥内を注意深く、ゆっくりと蹂躙しながら軽く抜き差しする。

 左手で自身のズボンの前をくつろげると、すでに芯をもったそれに手を伸ばした。上下にゆっくり扱くとすぐにでも爆発しそうなほど反り返る。

 背徳感が欲情に火をつけ、アレキサンダーは左手のスピードを上げた。

 目を閉じたままのイアンが、差し込まれた2本の指を無意識にしゃぶる。


「っふ・・・ふ・・・」

 声を飲み込みグッと鈴口を押さえるが、あふれ出る滴が手の隙間から零れ落ちた。


 肩を揺らし、ふ――っふ――っ、と静かに大きく2度ほど息を吐くと、イアンの口から指を抜きとった。唾液でぬれる指をアレキサンダーは自身の口に含み、その味を堪能する。

 ――まるでチェリーのシロップみたいだ…

唾液をなめとるという倒錯的な行為に脳みそが味覚をバグらせる。


 サイドテーブルにきちんと畳んで重ねられた白いハンカチを一枚取って自分のモノをふき取る。白く濁った欲望が滴る手を拭う前にその指をイアンの下唇にあてると、あっ・・ん・・・と吐息を漏らして舌が滴を舐めとった。その息を逃したくなくて、思わず唇を重ね塞いだ。

 チュッと軽く音を立ててからそっと離す。

 手を拭って簡単な生活魔法で残滓を清めると、イアンの顔の横に肘を置いてじっと寝顔をみつめた。



 イアンが両腕を頭の上にググっと伸ばし、グーにした手で目を擦る。

 ゆっくりと目を開くと、その濃紫の瞳に優しく微笑むアレキサンダーを映した。

 ――アレク・・・笑ってる・・・夢…じゃないよね・・・。

「うわっ!」

 急に意識がはっきりとして飛び起きると、ちょこんとベッドの上に正座した。

「あっ、ごめん、僕寝ちゃってた。もしかしてずっと待ってた?」

「ちょっとだけな。寝顔がかわいくて見とれてた。もう少し寝ていてもよかったくらいさ。」

 物は言いようだ。

「今何時?アレクご飯は?」

「今から。お前と食べようと思って。」

「ほんとごめん。お腹すいたよね。」

「気にすんな。待ってる間つまみ食いしてたから。」

「えーっ、ズルいよ。」

 すねた口調で笑顔を向けるイアンの口元を凝視する。指に熱い舌の感触がよみがえり、チェリーシロップの香りが鼻腔をくすぐった。。


「やだ、僕よだれ出てる?」

 視線に気づいて手の甲で口を拭うイアンを前に、アレキサンダーは罪悪感を隠すように両手で目を覆った。

 ――最低だ、俺。

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