第46話 遺跡ツアー
「たぶんここはこういうことを意味しているんじゃないか?」
「おおっ、なるほど! おそらくガクト殿の言う通りじゃ。むむむ、今まで難解だった部分が理解できたわい」
言語理解スキルのおかげでマリスラ語を解読することができるので、直接教えるのではなくちょうどいいくらいのヒントをもっともらしい理由を添えて与えてあげると、タルムさんは順調にマリスラ語への理解を深めていく。
こういったものは自分で解いていくのも楽しいものだからな。それにしても、俺がスキルの力で完全に文字を読めることを隠しながら導いていくのはなかなか大変だな……。某名探偵がおっちゃんを正解へ導く大変さが少しだけ分かった気がする。
「ガクト殿との出会いに感謝せねばなるまいな。まさかふらっと声をかけた者がこれほど文字に理解が深い者だったとは思わなかったからのう」
「俺のほうこそマリスラ遺跡に詳しいタルムさんがいてくれて助かったよ。いろいろと案内をしてくれてありがとう」
あれからも俺とタルムさんは一緒に行動し、この遺跡を見て回った。そこに残された文字や移動の合間にタルムさんがマリスラ語を解いていく手伝いをしていった感じだな。
タルムさんはこの場所に詳しくて、演習場や門だけでなく、いろいろな場所を案内してくれた。ここには教育機関や公共施設などがいろいろとあったようで、ここに住んでいた人たちの生活が垣間見えたような気がした。
前世の縄文時代の遺跡や弥生時代の古墳なんかは相当昔のものだが、ここの遺跡にある建物なんかはそこまで昔の物ではない。むしろこの異世界の現在の技術と大差がないので、なんでこの都市が滅んだのか本当に謎である。
前世の都市伝説や伝承などもこの都市と同じような感じでできたのかもしれない。
「さて、そろそろ日も暮れそうだし、今日はこの辺りにしておこうか。さすがに広すぎて1日じゃ無理だったか」
今日は一日中この遺跡を回ってきたが、全部回りきることができなかった。
タルムさんのガイドと解説もあって、じっくりと回ることができて俺も満足だ。やはり古い建物は男のロマンである。この遺跡の入り口の他にもところどころに大きな広場があり、そこで野営してもいいようだ。
……勝手に建物の中で野営をするマナーの悪い者もいる。ただでさえ時間が過ぎて崩れやすいことだし、こういった歴史的な遺産は大事にしてほしいものだ。
「ほう、このミードはうまいのう!」
「ああ、星蜜酒という特別な蜜を使っているからな。普通のミードよりもうまいだろう」
広場にテントを設営した。タルムさんも同じ場所に泊まるようで、収納魔法からテントなんかの野営道具を取り出した。どうやら結構な歳なのにこういうことには慣れているようだ。
タルムさんの野営道具もなかなか年季が入っている。普段俺が使っているのも結構なものだが、俺は旅をしているからな。
「うむ。こいつは良い酒じゃ。礼を言うわい」
「俺の方こそこんなに良い食材をありがとう。まさか野営をしながらブラックワイバーンなんて高級食材を食べられるとは思ってもいなかったよ」
「ふっふっふ、今日はガクト殿のおかげで研究が進んだからのう。少ないがそのお礼じゃ」
俺の方は昨日も飲んでいた星蜜酒を出し、タルムさんはそのお礼にと肉を提供してくれたのだが、その食材がすごかった。
ブラックワイバーンはワイバーンの中でも特に肉質が柔らかい。かなり凶暴なため、Cランク冒険者でも少し厳しく、Bランク冒険者がパーティを組んで討伐するレベルだ。
俺も別の種類のレッドワイバーンの肉は一度だけ食べたことがあるが、ブラックワイバーンは初めてだ。そんな肉を収納魔法で持っているとは本当にこのおじいさんは何者なのだろう……?
まあ、俺は相手の背景に対してはあまり突っ込まないがな。なぜなら俺もいろいろと突っ込まれると面倒だからだ。
「さて、こんなものでいいだろう。こっちの方は厚めに切って焼いたもので、そっちは薄く切って順番に焼いていくから、こっちのタレや香辛料を付けて食べてみてくれ」
「ほう、こいつはうまそうじゃ! ガクト殿は料理もできるのじゃな」
「そりゃ一人で旅をしているからな。毎日の飯を作っていたら、自然とできるようになるさ」
前世でも旅をしているころから、自分で料理を作っていたものだ。もちろん店でできた料理も買うが、自分でその土地の食材を購入していろいろと試すのも悪くない。
そして自分で作った方が安くすむのである。前世で旅をしていたころはそれほどお金に余裕があったわけじゃないので、財布の事情もあった。今ではその時の経験が生きているので、自分で料理していたことにも意味はあったようだ。
タルムさんが出してくれた肉の塊は結構な大きさがあったので、二種類の厚さにわけて切り分けた。厚く切った方は肉の味を最大限に味わうために味付けは塩コショウだけだ。
そして薄く切った方は小皿に取り分けたタレや香辛料で食べる。ステーキと焼き肉のようなかんじだな。さて、いよいよ実食といこう。
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