第44話 魔法都市
「ほう、ひとりでいろんな場所を旅しているとはすごいのう」
「それを言ったらタルムさんもひとりでここまで来ている時点で十分すごいよ」
マリスラ遺跡を歩きながら、タルムさんと話をする。
ここまでは街から馬車が走っており、魔物がほとんどいないとはいえ、ひとりで旅をするのはなかなか危険な行為だ。タルムさんの年齢を考えたらなおのことである。まあ、おそらくタルムさんは魔法を使えるのだろうから、大丈夫なのかもしれない。
この世界には魔法という不思議な力が存在する。魔力というものを引き換えにして水や炎を出すことができる力だ。しかもその魔力とやらは自然に少しずつ回復していくというのだから、質量保存の法則とやらはどこにいったという話だな。
俺もそんな魔法の力を使ってみたかったが、どうやら魔法には適性があるらしく、俺にはその魔力とやらがなかったらしい。女神にもらったスキルがあるとはいえ、一度は使ってみたかったので残念だ。
魔法の適性は種族にも関係があるらしく、魔法が得意な種族であるエルフであればほぼ魔法を使うことができ、苦手な種族である獣人族はほとんど使えないらしい。ちなみにハーフエルフのカトレアは魔法を使えることができるぞ。
「俺はこういった景色の良い場所やおいしい食材や料理なんかがある場所を巡っているんだが、タルムさんはやはり魔法の研究でここに来た感じか?」
「うむ。儂は趣味で魔法の研究をしておるのじゃが、古代の魔法にも興味があってのう。この遺跡にもすでに何度か来て、なにか面白いものがないか探しておるのじゃ」
「なるほど。それじゃあ、ここには何度か来たことがあるんだな。それは心強い」
どうやらタルムさんは何度かこの遺跡に来たことがあるらしい。俺一人でも迷うことはないと思うが、ありがたいことだ。
「残念じゃが、ここに何度か来ても特にたいしたものは見つけられんかったがのう。それでもこの場所は魔力の質が濃く、居心地は悪くないんじゃよ」
「へえ~そうなのか」
俺にはまったく感じられないが、ここは魔力に満ちた場所らしい。
「おおっ、これは見事な場所だな!」
タルムさんと一緒にマリスラ遺跡にある多くの古い建物見ながら歩いてきた。そしてその建物よりも大きくて開けた場所へと出てきた。
地面に敷き詰められている巨大な円形状の石はこれまで見てきた建物に使われていた素材よりも丈夫なのか、永き時が過ぎた今でもある程度原型を残していた。まあ、雑草などはかなり残っているがな。
そして外壁のアーチや崩れかけた石柱は芸術的な美しさも秘めていた。
「ここはおそらく当時の魔法使いたちが戦いながら己の腕を磨いていた場所と推測されておるのじゃ。このマリスラという都市が現代の魔法都市と同じようにあらゆる場所から優秀な魔法使いを集めていた場所のようじゃな。ここで古の魔法使いたちが切磋琢磨していたことを考えると、この老いぼれの血も沸くというものじゃよ」
「はあ~なるほどなあ」
ローマにあるコロッセオのようなものなのかもしれない。まあ、コロッセオは見世物として罪人を処刑したり、殺し合いをしていた血なまぐさい場所であることを考えると、どんなに芸術的に美しくとも考えるものはあるがな。
とはいえ、この場所は大きな観客席もないことだし、魔法を使った演習場とかになっていた可能性が高そうだ。
ここはマリスラ遺跡の中でも大きく、主要な場所でもあるようで、俺とタルムさん以外にもちらほらと観光客がいた。街からも前世の観光バスのような観光馬車が出ているので、たまに大勢が訪れることもあるそうだ。
個人的には観光客が多いよりもこれくらいの方がいい。観光客が多いほど汚れていくものだからな。
「あちらのほうには大きな門があるぞ」
「本当だ。ここからでも見えるくらい大きいな」
広い円からも見えるくらい大きな門がまだ残っているようだ。タルムさんと一緒にそちらへ移動した。
「これは見事だ。ここはかなり昔の文明なのによくこんな大きな門を作れたなあ」
このマリスラ遺跡では現代のように金属製の物は存在しないみたいだが、この門や先ほどの巨大な石柱などは結構な加工技術で作られたように見える。この異世界自体それほど文明が進んでいるわけでもないのに不思議だ。
「ここは魔法都市じゃからな。この門も建物も土魔法で固めて壁を作ったり、巨大な石を魔法で加工したのじゃよ」
「そういうことか。魔法の力はとんでもないな」
この世界の住人はだいぶ昔から魔法が身近にあったようだ。まさか魔法で建物や門を作り出すことができるとは前世の建設会社もびっくりだろう。
それにしてもタルムさんは本当に詳しいな。まるでガイドのようにいろんなことを教えてくれて、とても助かった。
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