第42話 次の目的地


「さて、次の目的地までもう少しだな」


 昨日は夜中までミロネス塩湖の美しい光景を楽しんだ。


 地面には雨が溜まっているため、テントを張ることができなかったので、寝る際は元いた場所に戻ってきて寝た。この1週間はミロネス塩湖の天気を見つつ、次の目的地へと歩いて向かっている。


 ミロネス塩湖の天気を第一と考えていたので、馬車を使わずに歩いて移動をしていた。馬車で移動している際に突然瞬間転移スキルを使って離脱するわけにもいかないからな。幸い次の目的地は徒歩でもそこまでかからない距離だったから助かった。おそらく今日中に着くはずだ。


 相変わらず目的地までの移動は大変だが、苦労したぶんそこで出会った光景や料理の感動が増すので、いつも通り頑張るとしよう。




「よし、なんとか目的地に到着したな」


 今日は一日中歩き続け、日が暮れる前になんとか到着することができた。


「おお~こいつは壮観だ。自然の景色もすごいけれど、人工的な建造物も見ごたえがあるなあ」


 建造物といっても、真新しく大きくて立派な建物というわけではない。むしろその逆で、ここにある石造りの建造物には長い月日が経つことによって濃い緑色のコケやツタが深く生い茂って絡みついている。


 地面に広がっている石畳はところどころひび割れており、建造物の壁はところどころ壊れていて風化した部分もある。


「ただの遺跡ではなく、魔法文明の遺跡だからな。興奮しない方が無理というものだろう」


 そう、ここは昔に滅んだとされている魔法都市であるマリスラ遺跡だ。


 この世界にある魔法は遥か古より発見されたもので、長い歴史の上に積み上げられてきた歴史がある。


 異世界の遺跡なんて興味しかない。前世でもカンボジアのアンコールワット、タイのアユタヤ、アテネのアクロポリスなど様々な遺跡を見てきたわけだが、この異世界には魔法が存在する。古の魔法を使って築き上げられた都市とはどのようなものか想像もつかない。


「時間が遅いということもあって、あまり人はいないな。本格的に見て回るのは明日にしよう」


 もうすぐ日が暮れそうということもあって、マリスラ遺跡の入り口にはいくつかのテントがすでに設営されていた。どうやら俺と同じでここに泊まる人も多少はいるようだ。


 マリスラ遺跡はかなり広い遺跡であるため、入り口だけでなく、中で野営をしている者もいるかもしれない。ここは観光地にもなっており一般人の立ち入りが許可されているからな。


 国もこれだけ大きな遺跡はすべて管理することができないのだろう。重要な場所に関してはさすがに立ち入り禁止区域となっているらしいが。


 俺も遺跡の外でテントを張って、野営の準備をする。


「遺跡にオレンジ色は映えるものだな。それに遺跡を背景に夕日が沈んでいく姿は実に美しい」


 ミロネス塩湖や海に夕日が涼む景色も見事であったが、人工物である遺跡に夕日が沈んでいく姿も実に見事なものだ。雲海は夕日の赤に染まり、まるで天空が燃えているかのように揺らめく。遺跡のシルエットは、赤と紫の空を背に、荘厳さを静かに漂わせていた。


 すでに滅んでしまった文明の象徴である遺跡にはこの時間帯が一番似合うのかもしれない。


「ふむ、哀愁漂うこの景色にはこの星蜜酒がよく合うなあ」


 今日は超健康スキルがあってもだいぶ疲れたため、晩ご飯は以前に作ってバックパックに入れておいた料理を取り出した。さすがに俺も毎日料理を作るのは大変なので、いつも少し多めに作った料理をバックパックに保存してある。


 そしてこの星蜜酒はミードの一種だ。ミードとはハチミツ酒とも呼ばれ、前世でも最古のお酒のひとつだった。ハチミツの発酵を利用し、水とあわせて数週間放置するだけでできるらしい。


 ただ、その作り方ではそれほどうまくないらしいのだが、この星蜜という蜜は甘味が濃厚で、発酵もより進みやすいので実にうまい。


「さらにこいつに酸味の強いレミロムの実の果汁を加えるとハチミツレモンサワーみたいな味になるんだよなあ」


 星蜜酒のままでもうまいのだが、さらに果物の果汁を加えることでさっぱりとした味になる。


 日が暮れて暗くなった遺跡の雰囲気に古くから伝わるこのお酒が良い感じだ。ここまで歩いてきた疲れが一気に消えていく。


 さて、明日はこのマリスラ遺跡をゆっくりと回るとしよう。

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