はじめての「おつかい」
@yoshitak
第1話 ハンター見習い
僕たちの種族で尊敬を得られる階級はなんといってもハンターだ。そして、我が一家は代々優秀なハンターとして数多くの栄光を獲得してきた。
父上は僕が5歳になる前に死んだ。獲物との壮絶な死闘の末に相討ちを果たした。周りの大人たちはこぞって父上の名誉の戦いを讃えてくれた。我が帝国は亡き父に最高の勲章を下された。そのおかげで、一家は遺族年金によって経済的な心配がなくなった。
母上も僕たち兄弟を産むまでは立派なハンターだったと聞いている。男よりは若干劣る体力を感じさせない強さで、ある星では伝説的な戦いに勝利したらしい。今は厳しさの中にも優しさを抱く慈愛に満ちた母親である。
兄上もことさら誇らしい存在だ。ハンターとして認められる最終試験にトップで合格したばかり。こんなに優秀で輝かしい兄がいることを自慢せずにはいられない。いつも僕の成長を気にかけてくれているんだ。僕といつも比べられるのでちょっとうるさい時もあるけど…。
僕はまだ15歳。一人前として認められるまでに、いくつもの関門を越えなければならない。今はハンター見習い、といったところなんだ。
我らが帝国では、ハンターの称号を得る前に、未知の星に単独で降り立ち、その星の生物を狩るという最終試験が課せられる。未知の星の未知の獲物との戦いには、途方もない勇気と技量が試される。ハンターたちはみんなその過酷な課題をクリアして一人前に認められるんだ。さらに、優れたハンターの中から戦士が選抜される。でもそれはほんのひと握り、雲の上の存在だから、今の僕には想像もできない。
最終試験までにはいくつもの関門がある。それに合格しないと先には進めない。ハンターへの道は簡単ではないんだ。試験はいつも一発勝負。負けるか死ぬか、体を壊すかしたら、そこでハンターにはなれない。絶対にそれは避けたい。全て合格してハンターになるんだと、僕は心に決めている。
ハンター選抜試験は僕の年齢から始まる。第一段階の課題は、あの聖なる山に住む火の鳥の卵を巣から取ってくることだ。
僕らの仲間はそれを「おつかい」と呼んでいる。そのくらいは朝飯前でこなさなきゃ次には行けないという意味。そこには強がりが多少入っている。
火の鳥は翼を広げると、僕の身長の倍くらいある猛禽。鉤爪を開くとそれだけで僕の顔よりでかい。性格はとっても凶暴。牧場の家畜を襲ってペロリと平らげることもある。前の年には第1試験で何十人が命を落とした。でも、これは序の口。卒業試験はさらに過酷だ。単身で大陸に渡ってモンスターベアーを探し、自分の倍以上ある相手に勝たなければならない。これは本当に命懸け。生還率は半分、残り半分も重い怪我でハンターを諦めるので、大半はここまでに篩い落とされることになる。
晴れて学校を卒業できたら、ハンターを養成する専門のアカデミーに進める。そこで最終試験に臨むためのスキル、宇宙船の操縦や複雑な武器の扱い、こことは違う星でのサバイバル術などをみっちりと学ぶんだ。
でも、そこまでいくのは随分先のこと。今の僕は明日に迫った最初の試験のことで頭がいっぱい。明日のディナーは火の鳥の卵料理がメインディッシュと決まっている。母上が朝から1日かけて準備してくれる。
一族の名誉に賭けて、その期待を裏切らないつもりだ。
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