第49話 照れ隠しの犠牲
マリアが王都へ戻ってきてしばらくはダンジョンへも行かずにゆっくりしていたのだが、暇を持て余して今日はダンジョンへ行く事にした。
イザベルに冒険者の装備を付けてもらったマリアは、ダンジョンの第一層へと足を踏み入れる。
「ひさびさですわ」
ダンジョンの中特有の外とは違うひんやりした空気に顔を綻ばせると、マリアは腰のメイスに手を添える。
「それでは——やぁあってやりますわ!」
メイスを肩に担ぎ、マリアはダンジョンの奥へと走り出した。
マリアが狩場にしている場所まで向かう道中で、魔物と戦っている冒険者のパーティを見かけた。
マリアはルミナスの白虎に暗黙のルールを教わったので、冒険者達の邪魔をしないように離れた場所でメイスをしまって観戦する事にする。
冒険者達は4人組で、うまく連携して魔物と戦っている。
「次、頼んだ!」
「分かってる、任せて!」
お互いに声を掛け合いながら敵を翻弄し、危なげなく魔物を倒し終えた。
冒険者達は緊張した様子から一転、勝利に喜びお互いを讃え合っている。
マリアはその様子を見て邪魔をしないように、サッとこの場を通ろうと通路の端を移動して通ろうとした。
「あれ、マリアさん!」
しかし冒険者の1人がマリアに気づいて声をかけてきた。
どうやら冒険者はマリアの事を知っているようである。
「お、お前らそんな、声をかけて大丈夫なのかよ?」
4人組の内1人は仲間のその行動にギョッとした様子で驚いている。
「マリアさんはこれから探索ですか?」
「えっと……」
マリアが誰かわからずに戸惑っていると、冒険者達の紅一点の少女がハッとした様子で挨拶を口にする。
「私達以前マリアさんに助けていただいた——」
マリアは以前冒険者ギルドのロビーでお礼を言われた事を思い出してポンと手を叩いた。
「ああ、あの時の! あら、でもあの時は」
「はい! 1人メンバーを増やして安全に探索できるようにしたんです! その分沢山倒さないといけないから大変ですけどね!」
「そうなんですのね、頑張ってくださいませ」
約1人はマリアの容姿をジロジロ見ながらおっかなびっくりと言った様子であったが、挨拶を終えたマリアは再びメイスを抜き、ダンジョンの奥へと向かう事にする。
「それでは失礼しますわ——よっしゃあ! たぎりますわぁ! ボコボコにしてやりますわよ!」
マリアは雄叫びを上げると一目散にダンジョンの奥へと駆けていく。
その後ろ姿を、冒険者達は苦笑いをしながら見送った。ただ1人だけ、新しく加入した仲間が目を見開いてどん引いていたので、他の3人は帰り道に色々と説明しながらマリアを称えていたのだとか。
冒険者と別れたマリアは、好戦的な笑みを浮かべてウズウズとした様子で魔物を躱しながら奥へと進んでいた。
「その時のことはあまり覚えていませんが、いつまでも感謝され、目標にされるというのは照れくさいものですわね」
先ほどの冒険者達はいつかマリアとダンジョン探索できるくらいに強くなるのが目標だ。などと話していた。
現実問題、彼らがマリアに追いつくにはどれだけの困難があるかはさておき、そう言ってもらえるのは嬉しいものである。
「到着しましたわ! あなた達、覚悟しやがりませ!」
ルミナスの白虎に教えてもらった狩スタートの地点にたどり着いたマリアは、はにかみながら魔物に飛びかかった。
その日、ダンジョンの奥の凶悪な魔物がマリアの照れ隠しに何体ボコボコにされたのか。
それは、マジックバッグの容量分だったであろうことだけは想像できたのであった。
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