第2話 「名もなく、帰還する」

第二話:【名もなく、帰還する】


任務は終わった。

いつも通り、俺は生きていた。


怪物を倒したのは俺以外の奴。

血を流して倒れたのも俺以外の奴


でも、常に最前線に立ってたのは俺だった。


……それに、気づいた者はいない。


「はい、帰還〜。依頼完了、っと。猫背は裏口からな」


ギルドの裏にある、厨房の横の扉。

そこが、奴隷の出入り口。


床がキシむ廊下を歩いて、酒場の裏手にある倉庫へ。

ベッドじゃない。

藁の詰まった木枠だ。


湿ってる。

腰が痛い。

でも、寝る。


「ほら、夕飯。冷めてるけど食うなら食え」


ぽい、と皿が投げられる。

湯気も出てない粥。味も、もう覚えてない。


酒場の主人は俺に一言もかけない。

視線もない。


俺に感情を持っていないのではなく、

感情を持つ価値がないと思っている。


明日は別のパーティの仕事が入っているらしい。


仲間は変わる。

任務も変わる。

でも、俺の立ち位置は変わらない。


盾として立って、倒れて、起きて、また立つ。


それだけの、いつもの仕事。

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