和風異世界の農民に転生しました!蝦夷(エルフ)の美少女と一緒に武士になって、大名に成り上がります!

万和彁了

第1話 出会い

 気がついたとき、柔らかな腕に抱かれていることに気がついた。


「ああ!生まれてくれてありがとう!私の坊や!」


「かわいいな。これからよろしくな息子よ」


 どうやら俺は赤ん坊らしい。おかしい。俺はたしか。たしか?そう。死んだのは間違いない。だけどどうやって死んだのか?それまでどうやって生きてきたのか?それをうまく思い出せなかった。


「名前はどうしましょうかあなた?」


「そうだな。占いによると辰巳の方角が今日は吉らしい。だからこの子の名はタツミとしよう」


「まあ。男の子っぽい可愛い名前ですね。よろしくねタツミちゃん」


 俺はタツミと名付けられた。昔の名は思い出せない。日本人だったのは間違いないが、それ以外はよくわからない。でもここも、というか今いるこの部屋の雰囲気は古き良き日本の雰囲気を感じるのだ。


「では領主さまに届けを出してくる。村の衆も祝いを出してくれるだろう」


 父らしき男は俺の頭を一撫でして部屋から出ていった。そのあとは入れ替わり立ち代わり人々が祝いの品を持ってきた。米俵とか刀とか鏡とか絵とかなんやらかんやら。訪れた人たちの髪の毛や肌の色は様々だったが皆日本語を話していたし、神主みたいな人がやってきて、俺の名前の書を筆で綺麗に書いて神棚みたいなところに飾っていた。なんとなくわかってきた。ここ、異世界だ。だけど和風なんだと。こうして俺は和風異世界の辺境の村のちょっと豪農な家の長男として生を受けたのである。








 この世界には魔法があった。誰でも使える。これのお陰で中世くらいの水準の技術力しかないのに、清潔に心地よく過ごせた。だがこの力があるせいで困ったこともある。村同士の争いが過激なのだ。水利権をめぐって農民同士が農具に魔力をエンチャントして殺し合うのは日常茶飯事だった。世は末法である。俺はまだ子供だったから紛争には出てないけど、父はたまに村人たちと一緒に近くの村と争って、なんか戦利品を獲得して持って帰ってくることもあった。父は強い人だった。村人たちが領主以上に慕うくらいには。


 だからそれがよくなかったのだ。









ある日のことだ。近くの村々の連中が家に集まってきていた。俺は母に下の子たちの面倒を見るように言われた。庭で妹たちと遊んでいるといると奥の部屋から声が聞こえた。


「ここらの領主は役に立たん!武士のくせにろくに村々の調停も行えない!」


「戦わない武士が我らを踏みつけて年貢を取っていくなど言語道断!」


「そうだそうだ!我らは新たなる棟梁を奉るときが来たのだ!」


斎日いみび殿。あなたこそが我らの新たなる頭に相応しい」


 物騒な話題だ。斎日とは俺の家の苗字だ。父はここら一帯の村々の人々から下克上のリーダーに選ばれてしまったのだ。


「是非もなしか」


 父はそう言った。俺は幼いながらも今の世の中を把握はしていた。中央は幕府の権威が陰り、地方は群雄割拠の時代を迎えていた。大陸の東北であるこの刈通かるつ地方にもその波は押し寄せつつあったのだ。その会合の後、この一帯の村々は連合を組んで領主に反乱を起こした。父の反乱軍は領主の軍をあっというまに蹴散らして支配権を握った。だが領主は自身が仕える守護大名に救援を要請。守護大名の大軍勢を前に父の反乱軍は破れ、領主は支配者として返り咲いた。その後、父と各村の有力者たちは捕らえられて処刑された。


「いいですか。タツミ。父の仇を討つのです。この刀を持っていきなさい」


「母さん。何を言ってるの?逃げよう。蝦夷たちの領域まで逃げれば、守護の軍だって追ってこれないよ」


「母は逃げません。夫は大義のために立ち上がりました。ですがその本懐は叶わず無念な死を迎えてしまいました。ならば妻である私は夫に殉じてその魂を慰めねばなりません」


 母は儚く笑みを浮かべる。


「わかんない。わかんないよ母さん」


「いつか分かるときが来ます。いいですか。あなたは美しく、強い子。だからこの扶桑の御国と御民を導き護るのです」


 そう言って、母は神棚の前で舞を舞って、自分の首を刀で切り裂いて自決した。俺はただ茫然とするだけだった。だけどやらなければいけないことがある。俺は妹たちを連れて村人たちと共に北へと逃げた。そして俺たちはそこに隠れ里を造りそこで息を潜ませながら生きることになったのだ。









 体が大きくなり、俺は畑を耕す傍らで狩りをやっていた。復讐のことは考えないようにしていた。父と母は俺を愛してくれた。だが現代人的価値観を持ったままの俺には父と母の価値観が理解できず、消化がしきれなかった。うちの家はいわゆる半農半士の家だったが、そういう武士道的価値観に俺はぴんと来なかったのだ。今の隠れ里の生活は悪くはない。食うに困っているわけではないし、妹たちもちゃんと育っている。なにも不足はない。


「武士道は死ぬことと見つけたり。ってのは誰の言葉だったんだろうか?」


 前世がどんな人間だったのかは思い出せない。だけどいわゆる理系的知識は豊富に持っていたので、多分何かしらの技術者をやっていたんだと思う。俺はその知識のお陰で隠れ里でも重宝されている。だけどだからこそ、俺に父の姿を見て、反乱をしようとしきりに言ってくるものたちも多くいた。


「勘弁して欲しいよ。ほんとさ」


 俺はイノシシのような魔物に矢じりを向けて、魔力をエンチャントする。そして矢を放つ。矢は魔物の頭を貫いて絶命させた。


「肉ゲット!」


 流行りの異世界のようにステータスなんて便利なものはこの世界にはない。スキルは自分で作って磨くものだった。こういう現代によく似ているのかもしれない。俺は獲物を運ぶための準備を始めた。そのときだった。


『GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!』


 俺はその咆哮に驚いて空を見上げる。人が乗る竜が三匹ほど飛んでいた。だがよく見ると乗っている人の耳は長かった。


「エルフ……?いや?!あれが蝦夷か!」


 この世界には人間以外のヒトがいた。亜人とも言われる様々な種族。そのうち北のこの地方に蝦夷と呼ばれるものたちがいた。いままでその存在がいることは知っていた。だけど見るのは初めてだった。


「なんだ?あいつらはもっと北にいるんじゃ?」


 隠れ里は蝦夷と扶桑の民との緩衝地帯にある。彼らが自分たちのテリトリーの外へと出てきたということはなにか大変なことが起きているということだろう。俺は竜の飛ぶ方向に走る。魔力で体を強化して木々をジャンプして渡っていく。そして見つけた。


「XXXXX!XXXXXXX!?」


 金髪に青い瞳の美しいエルフの女が竜に向かって矢を射ていた。だがそのこと如くが魔法のシールドにより阻まれる。俺は気配を消してその女と竜に乗る連中を観察する。エルフの言葉は俺にはわからなかった。だがエルフの女の絶望しきったような顔には痛ましいものを感じた。俺は気配を隠したまま、矢を筒から三本取り出して弓にかける。そして火の属性の魔法を矢じりに練り込み、竜の羽に向かって矢を放つ。それらの矢は竜の羽に当たり爆発した。竜たちは翼を失って大地に墜ちていく。


「xxxx?!xxx!」


エルフの少女は驚いた顔をしていた。俺はすかさず彼女に向かって走り、彼女を抱きかかえる。


「xx!?xxx!!ワジン?!xxx!!」


「すまんが大人しくしててくれ!」


 俺は彼女を抱きかかえて加速し、一目散にその場から逃げ去った。





 隠れ里近くにある俺の狩猟小屋までエルフの女を連れてきた。女は途中から大人しくなってくれたので運びやすかった。女を降ろしてから、俺は水稲の水を飲み干す。そして息を整える。


「xxx。xx……なんで助けたの?あなたはワジンでしょ?」


「俺らの言葉ができるのか?」


「ええ。勉強したから。私の家は和人と密貿易してたから。ねぇ質問に答えて」


「さぁね。俺にもわからない。だけど自分を恥じたくない。だからだ」


「サムライミチってやつかしら?」


「それを言うなら武士道じゃないかな?」


「そう。でもありがとう。おかげで助かったわ」


 エルフの女はぺこりと頭を下げる。その所作には品性を感じた。蝦夷の中でも貴種の出に思える。


「私はラエーニャ・リシャールソン。あなたは?」


「タツミ」


「そう。よろしくタツミ」


 俺たちはこうして出会った。同族に追われたもの同士がまるで神に導かれるように。












 /*そしてモノミスははじまる*/




-----------

設定紹介!


扶桑

この異世界の国号。大陸であるが言語は統一されている。和風な異世界。



蝦夷

扶桑人(人間族)からみたエルフの呼称。大陸北部にいる。たびたび扶桑側と紛争を起こしているが、徐々に人間族に北に追いやられている。


武士

領主層階級、あるいは生き様を示す言葉。強さこそ正義。だがそこには美学がある。


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