ずっと好き?

 大学が終わった平日の夕方、ボクは急に不安になってきた。

 彼はボクのこと、ずっと好きでいてくれるだろうか・・・。

 自信が無いせいだ。

 あれから同棲を始めて、ボクも家賃を払わないといけないと思い、本屋さんでアルバイトを始めた。彼はそんなのいいよって言ってくれたけど、やっぱり罪悪感が勝ってしまう。そんなわけで、今日もレジに立ってそんなことを考えていた。

 小さな書店なので、お客さんも少なく、ヒマで、考え事ばかりしてしまって良くない。でも、なぜ今回はこんなに不安になっているかというと、彼が最近、大学が忙しいらしく、同棲らしいことをあまりしていないのだ。ご飯も一緒に食べることが無いし、抱いてもくれないし・・・ってボク、なんてことを考えてるんだろう!恥ずかしくて、顔を思わず伏せてしまった。

「あ、あのー。この本買いたいんですけど・・・?」

 顔を上げると、女子高生らしき人が話しかけてきた。

「あ!す、すみません!お買い上げですね!ありがとうございます!」

 ボクは慌ててレジを打って料金を頂き、商品を渡す。

「ありがとうございました!」

 お辞儀をして、お客さんが去っていくのを見守る。

(はあ・・・。何やってるんだろボク・・・ちゃんとしなきゃ!)

 そう思い、おもわず自分の両頬をペチペチ両手でたたく。

 それをたまたま見ていた店長は、なんか調子悪そうだね。今日は早めに上がっていいよ、と言われてしまった。ボクはすみません・・・と言いながら今日は早めに帰ることになった。

 外に出たら、うっすら夜になっていた。

 (今日は君に会えるかなあ。もう自分の部屋に閉じこもって勉強してるのかなあ。帰ったら、カレーでも作ろ。)

 

 キッチンに立って、カレーが完成し始めると、頭上に声が聞こえてきた。

「おー、いい匂いしてんじゃん!」

 君と会えた!思わず、彼を抱きしめるボク。

「お。妙に積極的だな。」

 彼は180センチを超えていて、ボクは165センチと身長差がありすぎて、ボクは彼の胸に顔をうずめてしまう形になる。

「だって、だって。久しぶりに会えたんだもん。同棲してるのに会えないなんてボク辛すぎだよ。」

 泣きながら応えるボクに彼はボクの頭を撫でながら、

「悪かった、とにかく大学の勉強が忙しくてさ。ごめんな、カレー一緒に食おうぜ。」


 カレーを食べながら、ボクは彼に質問をする。

「ねえ、まだ勉強大変なの?」

「いや、今日で一段落だな。・・・嬉しいか?」

 彼がニヤニヤしながら聞いてくる。

「そ、そんなこと無いもん!」

 図星を突かれて、思いもしないことを言ってしまった。

「そっか・・・。」

 それだけ言って、彼はまたカレーを食べ始める。

「そっか・・って、それだけ?」

「ん?」

 あっけない言葉を発した彼にボクは泣いてしまった。

「ど、どうしたんだよ。お前!」

 慌てて、対面していたボクの隣に彼は移動し、座る。

 そこで今まで思っていたことを勇気を出して、涙をボロボロ流しながら言ってみた。

 「君は、ずっとボクのこと好きでいてくれるのかなあ・・・。最近ずっと会えてなかったから不安になっちゃって。ボク・・・ボク・・・。」

 そんなボクを彼はそっと抱きしめて言ってくれた。

「ホントごめんな。お前にかまってあげられなくて。教授が難しい課題だしてさ、レポート書くのに一週間かかった。」

「そう・・・だったんだ・・・。」

「でも、明日からはオレ、お前の顔見られるから。心配すんな、オレは今でもこれからもずっとお前のことが好きだ。ずっとだ。」

 抱きしめられながら、ボクは大泣きしてしまった。彼はキスしたかったみたいだけど、それもままならないくらい泣いた。

 お互いの想いを確かめあえて、ボクは安心せずにはいられなかった。

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