《用語集3:拍動属性区分の特別講義》

 ※本編でも都度解説はありますので、この項目はおさらいぐらいの扱いです


 あー、オーケー、全員いるな?

 配布したマニュアルの拍動区分のページを開いてくれ。


 拍動。これは神経や脳を外部から揺さぶる他、精神や魂に影響を及ぼす概念だ。

 そして、ニルヴェイズには大まかに分けて7の拍動区分が存在する。


 それぞれの有用性、悪用された場合のリスク、見えるエフェクトの例が記載されてるから目を通しておきな。

 エフェクトについてはあくまでも目安だ。必ずこの通りに見えるとは限らねぇから、そこは注意しとけよ。自分の中から出てくる幻覚エフェクトってやつは、あー、俺は見えねぇが、それぞれ固有だろうしな。




>>しあわせ拍


【承認拍(しょうにんはく)】

 Good!:困難に対する励まし・肯定、迷いの解放を導く

 Bad...:上下関係の強要・従属関係を作りやすい


 Effect:指さし、拳、ガベル、雷(上から下、威圧、理不尽)


 認めること・認められること。そこにあるのは主従上下支配被支配の決定。

 認めてくれる人は心の支えにもなるけど相手に従わなくてはという誘導にも使われるのが厄介なところ。

 会議が戦場の人や人を統率してるタイプの職業はこれが使いこなしてなんぼみたいなところがあり、上司のマネジメント技術として承認派か後述の和解派に分かれるらしい。

 一部の被虐思考の人間にはごほうびにもなる。これはまあ、昔から。




【安心拍(あんしんはく)】

 Good!:リラックス、ストレスの軽減、安眠

 Bad...:行動不能・憂鬱・無気力な状態を生み出す


 Effect:さざなみ、泡、水(鎮静、沈鬱、停止)


 これがあればメンタルがチルで安定。安眠グッズやBGMなどにもお役立ち。ビジネスホテルの枕元にサービスとして存在していたりする。おいそがしな社会に一番密着している存在なのかもしれない。


 しかし、拍動汚染ともなれば戦意が削がれ、眠気や無意味な安心感で行動不能が出まくるだいぶ迷惑なビートに早変わり。そこかしこで抵抗不能の要救助者が発生する。

 気分が上がらなくなり、鬱々とした気持ちになる人も。




【和解拍(わかいはく)】

 Good!:コミュニケーションの円滑化、態度の軟化

 Bad...:同調圧力・思考が均一になりやすくなる


 Effect:カラフルな光、線や縄、音符(仲良し、同調、一蓮托生)


 ケンカしないで仲良くしよう! これがこの拍動の基本。敵対心を薄れさせ、抵抗する意思を減らす。

 これによって警戒している相手とも比較的楽に話ができるようになる。承認拍が信じ合える上下の喜びなら、和解拍は横並び肩組みの喜び。


 一方、これをずっと浴びていると他の人もこの拍動に入れたくなって同調圧力や過剰な情報交換の原因になりがち。つまり、徒党を組んで暴走しやすくなる。

 仲良くしすぎるのも考え物。




【官能拍(かんのうはく)】

 Good!:深い信頼関係の構築、自信を形成する、トラウマの回復

 Bad...:拍動汚染の進行が早い・中毒になりやすい


 Effect:炎、ピンク系のもやもや、ハート(熱情、溶解、中毒)


 その名もずばり強烈な快感を引き起こし、人の存在の核である魂を粉砕する超火力担当。

 魂まで蕩け、互いを理解しあえる濃厚な快楽はパートナー同士なら深い信頼関係の構築や、快楽を御す自信を得る手段にもなる。

 が、悪用するとやっぱり最悪。何せ一番気持ちいいので中毒性も最強。脳内物質ドバドバ。後述の乱拍と組み合わせるのはやっちゃいけないと言われるほど。


 以前は頭に「せ」の付く別の呼び方だったんだけど即物的すぎると問題になり名称変更された過去を持つ。後述のしあわせ拍については「せ」として扱われる。



 四つが合体すると~……


【しあわせ拍】


 Good!:悲しみに暮れる人を救う、最強のメンタルケア・ビート

 Bad...:攻撃で使うと受けた相手は廃人待ったなし


 Effect:黄金のきらきら、乳白色のオーラ、場所によっては紙吹雪なども(栄華・幸福・幸せの強制)


 上の四つの頭文字を合わせて「し・あ・わ・せ」なので総称がしあわせ拍。これを一斉に出せる者は、極めて攻撃的なスタイルを持つ存在として一目置かれたりヤバい目で見られたりする。

 攻撃としてまともに受ければメンタルグチャバキの精神汚染肉団子としてニルヴェイズの地面に転がる羽目になるだろう。



 そして、この一番ヤバい使い手が誰の支配も受けず郊外をフヨついてるのがニルヴェイズだ。仲良くしてくれよな。




>>しあわせ拍以外の拍動


【激情拍(げきじょうはく)】

 Good!:立ち向かう勇気、落ち込んだ気持ちを奮い立たせる

 Bad...:口論、暴動、扇動の原因になりやすい


 Effect:とげとげ、血しぶき、突風(怒り、衝動、突撃)


 怒り。憎しみ。そんな激しい感情をかき立てる拍動。安心拍の対抗みたいなところにいる。

 怖いときに勇気を与えてくれるのはもちろん、落ち着きすぎた心を奮い立たせる力でもあるけれど、無秩序に放つとそこらじゅうキレた人で溢れてワケわからん暴動が起こるようになる。

 怒りや憎しみは人の心を一つにするのにもお役立ちってこと。人間は不安に寄りやすい構造だ。




【乱拍(らんぱく/らんはく)】

 Good!:固まりきった状態をほぐす、メンタルリセット

 Bad...:精神不安定、パニックなどを引き起こす


 Effect:ノイズ、ひよこ、星(不安、混乱、動揺)


 精神がかき乱される。拍動汚染といえば、まあまず乱拍疑おうかなあ~みたいなところがある。

 もちろん、凝り固まった思考に刺激を入れて考え直させることもできるので、時に拍動汚染でガッチガチに洗脳された人を治療する医療でも使われる。


 しかし、この拍動とかいう精神干渉行き交う世界では一番メジャーな暴力として、チンピラでもこれが出せるメガホンを持っている。ニルヴェイズで暮らしていれば一日一回は会える。やったね。




【無拍(むはく)】

 Good!:拍動でどうにもならない最後の切り札

 Bad...:やっぱ暴力だよねという帰結になるので目の当たりにすると虚無る


 Effect:空間のひずみ、音のゆがみ、耳鳴り(人によっては環境音がよく聞こえるようになる)


 拍動を無効化する拍動。上手に使えば拍動汚染を阻止できる攻撃無効枠で物理枠。

 でも、ビートで殴り合う世界を急に現実に引き戻してボカッと殴る、基本的にはダーティーな禁じ手みたいな扱い。

 そもそも自然発生しない。つまり、ひどいやつがなんかして初めてできる人工の拍動ってこと。


 七種の中で最も新しく制定された区分。こいつもこいつで猛威を振るっている。人間、シンプルな暴力を受けても心と身体が壊れるのだ。




 安易にノせられるな。自分の魂からのビートを守れ。これが拍動維持はくどういじの基本だ。

 以上、ちゃんとおさらいしとけよ。講義終了。健闘を祈る!

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