ネメシスの最期
「ここは俺に任せろ!陛下とアガーテ王女を守っていたはずのシェフチェンコがここにいる・・・・ってことは、陛下の命も危ない可能性が高い。二人で行ってくれ!!」と、ゴドウィン。
ラーフとテレンスは頷いて、プルドー・ベイ城に向かった。
*
「アガーテ!!」と、十字架にはりつけにされていたアガーテの後ろから、小さな声がした。
「!?!ハインミュラーか?!」と、アガーテが小さく声をあげる。
「しーー!!」と、ハインミュラーが静かにするように促す。
「今から、女王陛下と君の縄を斬る。いいな??じっとしていてくれ」と、ハインミュラー。
ハインミュラーは数分かけて、アガーテとミラナ女王の、縛られている紐をすべて切った。
「感謝します、ハインミュラーさん」と、ミラナ女王。
「それより、あの化け物は・・・??」と、ハインミュラーが、親指で、オーウェン一人で戦っている黒い樹木のような化け物を指さす。傍らには、マドリーンが地面に座り込み、唖然としている。そこにニコラス隊長の面影はなく、ハインミュラー自身の父親とは気づかない。
「くっ・・・!!」と、オーウェンは苦戦していた。
死霊の国のモンスター・・・イグ・ハンなど・・・は、ザフキエルに任せ、オーウェンはフェイトと一人、戦っていた。だが、防戦一方で、なかなか活路が見いだせない。
「オーウェン・・・!!」と、アガーテが小さく悲鳴をもらす。
「ハインミュラー、オーウェンの助太刀に行ってあげて!このままじゃ、オーウェンが死んじゃう!!」と、アガーテ。
それはちょうど、フェイトの20本ほどある手のような触角の一つが、オーウェンの右腹を貫いた時だった。
「オーウェン!!」と、アガーテが金切声をあげる。
「ンン??さっきのはアガーテ王女の声・・・??」と、フェイトが顔をずらし、アガーテたちの方を見る。
「マドリーンよ!!立つのだ、マドリーン!!さあ、その魔法銃で、アガーテと女王を殺せ!!」
「・・・フェイト様、私をずっと騙していたのですか・・・??」と、マドリーンがゆらゆらと立ち上がりながら言う。
「マドリーンよ、私は、ずっと王族関係の者を、この数百年で、50名は殺してきた。その中で唯一取り逃がしたのが、アガーテとラルセン殿なのだ!私は、失敗作と私をさげすんだアテナ神への仕返しで、ついにアガーテの首を取る!!さあ、マドリーン、お前も王族は嫌いだろう!!私はよ~~く知っておる。さあ、撃て!!」と、フェイト。
「くっ・・・」と、地面に膝をつき、オーウェンが血を吐く。
「フェイト、ね・・・私も、運命は大嫌いだわ。けど、フェイトを越えて行くのは、ネメシスでもアサシンでもない・・・大切なものを護ると決めた、己のプライドよ」と言って、マドリーンは立ち上がり、涙に燃えるその目で、その手で、銃の引き金を、ゆっくりと、フェイトの方に向け、弾薬を弾倉に込め、己の魔力を込めて連射した。
「マドリーン・・・??」
そのうち2~3発が、フェイトの右目に当たった。マドリーンは、フェイトの目を狙ったのだ!
そののち、マドリーンは銃口をオーウェンの方に向け、オーウェンを貫いた触角の一つを撃ち、切り離した。
「マドリーン、何をする!最後のチャンスだ、それでアガーテを殺してこい!!それで、お前を許してやる、さあ!!」と、フェイト。
「うるさいわよ、狸じじい!!」と、マドリーンが銃でフェイトを撃ち続ける。フェイトは、素早く黒い触手を伸ばし、銃弾から身を護る。
「マドリーン、そんなに死にたいなら死ねばいい!!」と、フェイトが叫ぶ。
「マドリーン、危ない!!」と、アガーテが叫ぶ。
その時、ふと、最期を悟ったかのような顔をしたマドリーンが、アガーテの方を見て、ふっと笑みを見せた。それは、かなり前のこと、母・ミラナ女王の片腕を担ったころのマドリーンの、仕事の合間に見せる微笑みに似ていた。
「さよなら、アガー・・・」と言って、マドリーンは、背後から来たイグ・ハンに剣で心臓を刺し貫かれ、息絶えた。
「アガーテ、ここから動いちゃいけない!!」と、ハインミュラーが手でアガーテを抑える。
「ま、マドリーン・・・・」と、アガーテが涙を流す。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます