ぼくは「なろう系主人公」になれない。〜気持ちはわかるけどそうはいかんやろ〜
底道つかさ
私論として
昨今、人気ジャンルといえば、ぶっちぎりで 「なろう系」「異世界転生系」あるいはその類型の「異世界ファンタジー」であることに異論はないと思う。
いわゆる「なろう系」「異世界転生系」は、読者が持つリセット願望、あるいはリスタート願望を満たすことが要諦となっている。
想定読者は、自分の人生はクソだが、その責任は自分ではなく社会構造や出生、運――つまり世界にあると押し付けることで平静を保ち、脳内で試行している。
何かきっかけがあれば自分だってもっと頑張るし、そうすれば努力が報われて幸せに満たされる、という「▉▉▉▉▉▉」な想像があるのだろう。
これを満たしてくれるのが「なろう系」「異世界転生系」の物語構造であり、また、読者が世界観へ投身する機構としての主人公だ。
これが人気である所以だ。
この構造は、私自身と極めて相性が悪い。
普通の人間の姿でなく生きていると、きつい人生に置かれているのは、社会や出自、運の問題なんてものは誤差だと感じる。
周囲の構造を作るのは人間という動物の在り様自体に本質があり、それ以外は割合あまり関係が無いと自然に理解する。
無論、外因だって重要だが、最終的には自分自身の思考と行動の結果へ、責任と原因は帰結するのだ。(注(1):https://kakuyomu.jp/works/16818622173269566842/episodes/16818622173295440316)
だが、当初述べた、リスタート願望を持ち、「なろう系」がヒットした人にとっては、そんな理屈は分かっているつもりなのだろう。
なにより、そういう正論、説教が嫌いだから異世界転生するのである。
だが、再述で申し訳ないが、私には扱いづらいファクターだ。
「普通」に暮らしていると、根元的に人生を作るものは自分自身でしかなく、外因の割合は思うほど大きく無い事がそれなりに思い知らされる。
その中で、僅かな他人の優しにどれだけ生かされているかが分かる。幸運が無くても不運では無いことの慈悲を知る。マイナス1がマイナス10に紙一重で至らなかった偶然に感謝する。
そうすると、迂闊に「何もかもリセットしたい」「勝ち組からリスタートしたい」という考えは、気持ち的に深く頷いても気楽に賛同は出来ない。
のび太くんから散々学んだ教訓。
そんな心構えでは生まれ変わったって、結局碌な事になら無いだろうと言う、ドラちゃんのお説教。
これが、一部の真理に相違ないことが、頭では無く心で理解できるからだ。
心踊る異世界に転生して、最高の特別な力を手に入れて、沢山の良き人々が自分を愛し支えてくれる。
日常のささいな事件に刺激をもらいながら、世界を救う冒険なんて大それた事に関わらず、慎ましやかに過ごせばいい。
その程度のことで、「生きる」というクエストを、苦もなく幸せにこなせるというのは……。
余りにも「▉▉▉▉▉」に感じてしまう。
これが私の個人的な印象だ。
しかしまあ、現金な話だが、読まれたい物を創るならこのファクターは、今の流行りだと避けて通れない。
そして、単純な「なろう系」「異世界転生系」はとっくに飽和して反作用が生じ、新たな創作物に発展すらしている。
うっかり適当な物を出すとボロクソに叩かれたあと見向きもされなくなるので、テンプレート化した物語構造を下地にしつつ、いかに工夫を凝らすかという段階に入って、更に長い年月が経っている。
たが、その工夫も、いかにご都合主義への反感を誤魔化しつつ、「なろう系構造」の手軽な悦楽感を維持するかという目的に終始している。
不肖創作者として、それをやった人は凄いし天才的だとは思うのだが、だったら「なろう系構造」等にこだわらんでも良いだろうと愚考する。
それでも、こういったテンプレート構造の異世界ファンタジーばかりが作られるのは、結局そうじゃ無いと読まれもしないという、酷な現実があるからだ。
なら、私もそういう物を作るしか無い。
どれだけ自分の実感と相性悪かろうが、やるしか無いのだ。
それこそ、私だからこそちょっとは身に染みている話だ。
どれだけ環境が合わなくとも、結果を求めるならば、自分から歩いて行くことだけが根元的な解決法なのである。
針山の登り方、血の池の泳ぎ方、私は未だ知らなくても既に分かっているはずだ。
無論、あなたも。
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