第38話 重なる意志が、新たな音を生む
翌日、Link ZeroのメンバーはRe:Ariaの仮想ラウンジに集まっていた。それぞれの日常に戻りつつも、どこか“次の一歩”を見据えた視線があった。
「……次の合同曲、どうする?」
ルイが最初に話題を切り出す。
「そろそろ、“絆”だけじゃなく、それぞれの未来にも触れていきたい気がする」
沙羅が応じる。
「未来、ですか……」
咲夜は顎に指を添え、考えるように天井を仰いだ。
「まだ何も形になっていない、でも、きっとどこかにある“誰かとの約束”。それって、歌になる気がする」
響夜は、その言葉に小さく頷いた。
「“願い”から“誓い”へ。それが、Link Zeroの次の音になるのかもしれない」
そのとき、燈が手を挙げて言った。
「じゃあ、次の曲の仮タイトル――“Promise Echo”ってどうかな?」
「“約束の残響”……いいじゃん」
ルイが指を鳴らす。
「それぞれの声が、それぞれの想いを繰り返して、でも最後には一つに届くような……」
沙羅の目が、柔らかく細められる。
「その構成、俺、もう頭の中にあるかも」
咲夜がすでにノートを開きながら笑う。
Link Zeroは、少しずつ、“自分たちの音”を定義し始めていた。もはや「同期」や「デビュー組」といった枠に縛られず、ひとりひとりが“ひとつの音楽”としてチームを奏で始めている。
その日の会議が終わったあと、響夜は控え室の端で燈に声をかけた。
「ねえ、燈」
「うん?」
「……たとえば、この先、Link Zeroじゃなくなる日が来たとしてもさ、俺は、君と歌ってた日々を“始まり”だって言えると思う」
燈は少し目を見開いて、そしてふっと微笑んだ。
「……私も。でも、きっとその“始まり”は、終わらないままだよ。終わるってことは、もう歌いたくないってことだから」
その言葉は、優しくて、どこか強かった。
響夜は思う。
(この物語は、まだ“第1楽章”なんだ)
終わったように見えて、実はまだ何も終わっていない。むしろこれから、ようやく“本当の歌”が始まる。
そんな予感が、彼の胸に、確かに息づいていた。
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