第一部「土の聲」編
山々に囲まれた、静かな田舎の村。
そこで育った少年・ハルは、誰も近づかない“祠”に、不思議な引力を感じていた。
ある春の日、村に転校してきた少女・澪。
都会から来た彼女は、よそ者として周囲から距離を置かれていた。
だが、ふとしたきっかけで、ふたりは“聲の祠”で出会う。
祠の奥、土に埋もれた石の耳。
そこから聞こえるのは――名も知らぬ者たちの聲。
最初は幻かと思われたその響きが、澪の心の奥と呼応し始める。
名を呼ばれた記憶。
忘れられた存在たちの声。
ふたりは、村に眠る“土の聲”に触れていく中で、
少しずつ、名前とは何か、人が忘れてきたものは何かに近づいていく。
しかしその裏で、村の古い言い伝えや、澪の“知られざる過去”が静かに揺れはじめていた――
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